【No.558】
金沢大学版チューニング(TUNING)の進め方(その2)

○●○金沢大学版チューニング(TUNING)の進め方(その2)○●○

2015年5月発行の『週刊センターニュース546号』で「金沢大学版チューニング(TUNING)の進め方(その1)」として、TUNING作業を進める際の留意点、および、金沢大学物質化学類化学コース、岡山大学理学部化学科、TUNING Chemistry Specific Competences、Tufts University(Chemistry)のコンピテンスについて紹介させていただいた。今回は、次の段階として、分野に特徴的なコンピテンスを実際のカリキュラムにどのように組み込んでいくかについて、Tuning Educational Structures in Europeにおける化学分野の"Reference Points for the Design and Delivery of Degree Programmes in Chemistry"[1]での例を紹介させていただく。同報告書6.3 (pp.31-33)では、教授法、学習法、評価方法の三点からコンピテンスの扱い方について検討されている。

教授法:

教授者が、教授法において、どのように、学生が当該コンピテンスを獲得する手助けが出来るのか。

学習法:

学生が、当該コンピテンスを獲得するために、どのような学習方法が適切なのか。

評価方法:

学生が、当該コンピテンスを獲得したかどうか、または、どの程度獲得したのか、についてどのように評価するのか。

 

例1)フランス・グランゼコール

化学に関する本質的な事実、概念、原則、理論に対する知識と理解を示すことが出来る能力(関連する一般的技能としては、知識を応用する能力、母語による口頭および文書での意思伝達能力、分析、統合する情報処理能力、新たな状況に対応する能力、課題解決能力、自らの意志で活動する能力があげられる)

教授法:

講義、課題、実習、学士課程レベルでの研究プロジェクト。知識を有していることや理解していることは、(課題や試験においては)質問に文書で解答することや、プロジェクトにおいては、口頭でのプレゼンテーション、または、チュートリアル・グループに対する課題への口頭での解答などにより伝えられる。

学習法:

講義、課題、実習、職業実践(industrial placement/ internship)、研究プロジェクト。

評価方法:

文書(時には口頭)試験、実習および課題に対する継続的評価による。研究プロジェクトに対する評価には、口頭によるプレゼンテーションが含まれ、それにより意思伝達能力および科学的理解力が評価される。全ての評価活動は学生にフィードバックされる。それぞれの試験/評価は点数で示され、学期末にクラス内での順位として提示される。成績の悪い学生に対しては、学習プロセスにおいて適切な責任教員もしくは学科長による面談が行われる。学期毎に全ての教員とクラス代表学生たちによる会議が開かれる。その場では、基準に達していない学生全ての実績について議論することにより、達成できていない理由を確認することが出来るとともに、必要に応じて当該学生と話し合いを行う。

 

例2)ノルウェー

新しい課題を認識・分析し、解決にむけた方策を立てる。(関連する一般的技能としては、知識を応用する能力、母語による文書での意思伝達能力、分析、統合する情報処理能力、課題解決能力、意志決定能力、自らの意志で活動する能力があげられる)

教授法:

学生は、全ての実験室実習を通して指導を受け、質疑応答やチュートリアル(個別指導)によって身につけた技能を観察される。得られた結果の重要性は、適切な理論と結びつけられて実験室での全てのレポートの一部としてまとめられる。

学習法:

実験室での活動、および、実験室でのレポート作成がこれらの技能を獲得するための最も重要な手段である。

評価方法:

学生の実験室での実績は、実験室スタッフにより継続的に評価され、実験室でのレポートも注意深くチェックされる。実験室活動と繋がる試験もまた重要である。

 

例3)スペイン

実用的研究の計画、立案、実行。(関連する一般的技能としては、知識を応用する能力、計画・時間管理能力、母語による口頭および文書での意思伝達能力、分析、統合する情報処理能力、新たな状況に対応する能力、意志決定能力、自らの意志で活動する能力、倫理観があげられる)

教授法:

練習課題や実践例を通して、状況を設定し、要点を明確化し、正しい戦略を立てるための計画を学生に認識させ、それに慣れさせる手助けをする。学生グループが練習できるよう選択された話題による宿題も課す。成果を最大限にするため彼らの活動について授業内で議論する。

学習法:

ゼミやチュートリアル(個別指導)に参加する。様々なグループによる過程分析のプレゼンテーションに対する議論に参加する。

評価方法:

チュートリアル(個別指導)を通して宿題を追跡調査する。

 

 以上、コンピテンスをカリキュラムにどのように取り入れるのかの3つの例を紹介した。化学教育には全くの素人ではあるにも関わらず、化学について取り上げていて申し訳ないが、フランス、ノルウェー、スペインにおける教授法、学習法、評価方法と、日本の大学における理科系教育と大きく異なる点はないように思われる。『週刊センターニュース546号』で紹介したコンピテンスを確認した後、今回示した教授法、学習法、評価方法について、現在実施している内容を明示的に確認することで、さらに一歩チューニングを進めることが出来るのではないだろうか。化学分野は国際的に共通要素の多い学問分野であることは確かであるが、化学以外の分野においても同様に流れでチューニングの試行を行うことが、金沢大学の教育の国際通用性を学内外に示すために今後求められるものと考えられる。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)



[1]http://www.unideusto.org/tuningeu/subject-areas/chemistry.html