【No.556】
アクティブ・ラーニング型授業の充実化に向けて

○●○アクティブ・ラーニング型授業の充実化に向けて○●○

1.IDE大学協会東海支部「大学と高校との合同シンポジウム」参加報告

 7月3日(金)に名古屋大学にて開催されたIDE大学協会東海支部主催「平成27年度大学と高校との合同シンポジウム」に参加した。本シンポジウムは、毎年開催されているが、今年度は「高大におけるアクティブ・ラーニングの現状と展開」をテーマとして、愛知県立豊田東高等学校、愛知県立一宮高等学校、三重大学、大同大学、および学校法人河合塾の5教育機関からアクティブ・ラーニング(以下AL)型授業の取り組みが報告された後、意見交換が行われた。以下では、各大学における取り組みと意見交換で交わされた意見や論点について、簡単に紹介する。

 中川正氏(三重大学学長補佐(キャリア教育担当))からは、三重大学が教育目標に掲げる「4つの力」(感じる力、考える力、コミュニケーション力、総合力としての生きる力)について紹介された後、「PBLの全学的展開」の方針を打ち出してからの実践が報告された。PBL(Problem / Project-based Learning)が全学的に本格実施されたのは2006年度からであるが、そこでは、共通教育におけるPBLセミナー(選択科目)の開講とともに、学部におけるPBL教育開発、教員向けと学生向けのPBLガイド作成[1]、授業外学修環境としてのMoodle整備、「4つの力」評価システムの開発が一体となって進められた。PBLの導入により「4つの力」の向上がみられた一方、学生が「4つの力」自体について理解し継続的に育む仕組みと、最もPBLが必要だと思われる学生がPBL授業を履修する仕組みの必要性が明らかとなった。そこで2009年度には、PBLで構成する初年次教育科目(全学必修科目)を導入した。本科目は、各回の授業において、「4つの力」に関連するトピックについてグループで議論して理解を深めた後、その内容を活用してプロジェクト活動を行うというように、グループ活動を多用して展開される。また統一のテキスト、授業案、評価方法を用いていることが特徴的である。さらに、「キャリア・ピアサポーター」の資格をもった上級生が学修支援に入る。昨年度からは、共通教育および専門教育の双方において、PBLのさらなる浸透を図っているとのことである。

 久田晴生氏(大同大学授業開発センター副センター長)からは、2000年代以降の全学的な授業改善の取り組みについて報告された。1990年代後半、入学者全体の低学力化、入学者の自信喪失、入学者の大学での目的意識の希薄化により授業の成立自体が困難な状況に陥ったことを背景に、授業公開による持続的な授業改善のための取り組みが開始された。「大同大学授業憲章2001」では、全教員の授業公開の原則や研究授業と授業研究会の実施が定められている[2]。授業研究会は、近年は毎年16回(各学科2回程度)開催されているそうである。そのほか、授業改善に関する学内シンポジウムの開催などを通して、授業の安定や授業評価アンケート結果の向上という成果がみられている。授業改善というミクロレベルでのFD活動は成果を挙げてきた一方、ミドルレベルであるカリキュラムの改善に向けた活動が今後の課題であるとのことであった。

 意見交換では、ALのための学修活動と基礎知識伝達のための学修の時間面でのバランス、AL型授業の難しさ、授業時間外学修を保証するための工夫、大学と高校でのALの相違点などについて、フロアの参加者からの質問を皮切りに議論が行われた。ALと基礎知識伝達のバランスについては、Moodleの活用により知識伝達の一定部分を予習として行うことや、学習目標に照らして伝達すべき知識をあらためて整理することなどが挙げられた。ALの難しさに関しては、学生の身近な感覚・経験と理論を結びつけられるような問いの設定の仕方や、PBLの成果の質を保証するための教員の関わり方についての意見が交わされた。

AL型授業については、こうやれば良いという型はない。むしろ、グループ・ディスカッションなどの型にとらわれて、学生と教員のなかに知識の深い理解と活用、創造が生まれていなければ本末転倒である。各教員がそれぞれの授業において、また各教育機関がそれぞれのカリキュラムにおいて、「自分たちの提供する教育が学生のALを促せているか、それにより学生は何を学んでいるか」を問い続けながら試行錯誤するという面が大きく、それゆえにAL型授業の充実化に向けて考えるためには個々の取り組みを共有し、互いから学ぶことから始めるしかないように思われる。本シンポジウムはその良い機会であったし、このような場が増えていくことを期待したい。なお、三重大学の「キャリア・ピアサポーター」は、本学が今年度より導入したALA(アクティブ・ラーニング・アドバイザー)との類似点があり、資格取得のための教育プログラムなどALA制度への示唆も多いので、今後より深く調べてみたい。

 

2.ALAが参画する授業への見学とヒアリング

 センターニュースNo.550で述べたように、現在、ALAによる学修支援を実施している授業に対して、実施状況や効果を把握するために見学とヒアリングを実施しているところである。まだ終了していないため結果については次号以降で紹介するが、各授業担当教員は、ALAとともに授業をするという初めての試みの難しさに直面しながらも、ALAの参画による学生の学修活動の活性化や学びの深まり、さらにALA自身にとっての教育効果を感じていることがうかがえる。今週、各学域での説明会を実施しているが、今年度後期は人間社会学域および理工学域専門科目における講義・演習科目へとALA募集対象が広がるので、AL型授業の実践やALAの参画に関心をもたれた教員はぜひ募集していただきたい。

(文責 AP事業(アクティブ・ラーニング担当) 河内真美)



[1]『三重大学版Problem-based Learning実践マニュアル-事例シナリオを用いたPBLの実践-』(http://www.hedc.mie-u.ac.jp/pdf/pblmanual.pdf)、『PBL授業を受けるみなさんへ-学生向けPBL授業受講ガイド-』(http://www.hedc.mie-u.ac.jp/pbl-student/

[2]「大同大学授業憲章2001」(http://www.daido-it.ac.jp/daigakusyoukai/each_center/

lesson_center/kensyou/index.html)