【No.553】
共通教育カリキュラム改革を考える一助として

○●○ 共通教育カリキュラム改革を考える一助として ○●○

 本学が定めた金沢大学グローバルスタンダード(KUGS)に基づき、国際社会を生き抜く能力・体力・人間力を涵養することを目的とする教育を構築するために、共通教育のカリキュラム改編(GS科目など)が進んでいるところである。来年度には新カリキュラムが姿を現すわけで、その教育的効果の検証はまだまだ先の話となるが、今後を考える上で参考となる事例として山口大学のカリキュラム改革が挙げられる。6月6日(土)、7日(日)に参加した大学教育学会第37回大会(長崎大学)の自由発表部会にて、学生・教員アンケートをもとにした改革の結果と課題および方向性についての報告があったので、ここで簡単に紹介したいと思う。

 山口大学では平成25年より新しい共通教育が始まっている。その概要は、①入学者全員が同じ学習到達目標による30単位を共通教育の必修科目として履修、②原則クオータ制、③全教員出動体制から全学部主出動体制へ、④外国語教育は英語のみを必修とし、またキャリア教育科目(2科目)を必修、⑤異文化・多文化理解の基礎として地域を知る科目を新設、などというものである。アンケート調査は平成26年実施で教員388名(全体の36%)、2年次学生1264名(63%)から回答をもとにしている。いくつかの項目でみていく。

 まず共通教育の満足度は、どちらともいえないが教員・学生とも過半数を占めている。不満が多い理由としては、学生側は、科目を自由に選択できない、1年から専門科目を学べない、クオータ制で学べる時間が短い(先生も先走り内容理解が困難)、といったことを挙げる。教員側では新しい科目の目的や効果が不明確、大学らしい多様性を体得する機会を奪う、必修科目が増え高校と大学の違いを学生が感じられない、内容上浅い教育しかできない、などの理由が挙げられている。一方で、満足と回答した理由も挙げると、学生側は今まで興味のなかった事も知れ知識が広がった(文系・理系学生が互いに新しい視点をもてた)、科目選択の必要性がないが、教員側は授業をコンパクトにまとめる必要があり理解度を高める工夫ができた、専門以外で学生が自分を発見できる、出席率が高くなった、などと評価している。

 英語特化に対しては、教員・学生とも約40%が満足と回答し、必ずしも高くはない。ただ、学生側で「このままでよい」が40%を占める一方で、「もっと英会話中心の授業を」「TOEICスコアアップの授業を」と教員以上に英語教育の充実を求めている部分もあり、興味深い結果となっている。

 成績評価や教育方法についてみると、成績評価に対し60%が満足と回答しているものの、不満の理由として「課題の採点基準が不明確、成績評価基準が不明、同科目なのに担当者で評価が異なる」などが挙がっており、また、教育方法に対しては、不満の理由として「講義中心で工夫が足りない、教員中心で面白みがない、学生参加の授業を増やすべき」などが挙がり、いずれについても、改革以前と変わらない課題を抱えていることが分かる。

 以上の各項目についての結果を踏まえた上で、課題や今後の方向性をどのようにみているのだろうか。学生側は「もう少し科目選択の幅を広げるべき」(36%)、「従来の選択科目中心のカリキュラムに戻す」(23%)と改善を求めている割合が多く、また様々な分野に触れることができてもクオータ制により記憶に残りにくい、義務感がありやらされている授業で面白くない、といった意見も提起されている。一方で現状維持の回答も一定程度はある(18%)ようである。科目選択に対しては、教員側からも選択幅を狭めることで学生の教育効果やモチベーションを低くしているとの指摘や、本当に学生のためになっているのか、学生の科目選択が自分の将来やキャリアを意識して履修しているのか疑問、との意見が提起されている。

カリキュラム改革による実質的な成果をみるにはまだ時間を要するものと考えられる。これらアンケート調査の結果などから、新しい共通教育についてはまだまだ改善の余地があることが明らかになり、科目選択の幅や、外国語履修、クオータ制問題にともなう授業設計(授業デザイン)に関しては、すでに改善に走り出しているようであるが、継続して今後の動向を追っていきたいと考えている。

山口大学の状況も参照しつつ、本学においても、旧来のカリキュラムや履修方法による教育効果をすでにあるデータなどの収集・再分析など出来ることをして充分に検証を行った上で、教員職員間で共有し調整を行い、丁寧に進めていくことを望む。

 

○●○ 平成27年度第1回大学コンソーシアム石川FDSD研修会のお知らせ ○●○

主催:大学コンソーシアム石川教職員研修専門部会、大学間連携共同教育推進事業

テーマ:「アクティブ・ラーニングを促す授業設計」

日時:7月10日(金)16時~18時30分

会場:しいのき迎賓館セミナールームB 

対象者:加盟大学等の教職員

申込み・問合せ先:大学コンソーシアム石川事務局(吉田)yoshida@ucon-i.jp

趣旨:「教授から学修へ」の質的転換を目指して、これからの大学教育に光をあてるFDSDの新しい枠組みが求められている。アクティブラーニング(能動的学修)が目指すものは、学生の学びを起点にした大学教育をかたちづくる対話と学びあいと捉えることができる。本研修会では、ただ聴くことを乗り越え、学んでいることについて話し、書き、過去の経験と関連付け、そして日常に応用するというアクティブ・ラーニングの定義と戦略性を体感し、グループ討論を通じたシラバス再構築を目指す。

1.講演 「アクティブ・ラーニングを促す授業設計-対話と学びあいの教授学修の技法」

(金沢大学大学教育開発・支援センター・杉森公一准教授)

2.ワークショップ(60分)

 参加者の持参したシラバスをもとにグループ討論を行う。授業内・授業時間外における学生の能動的活動に注目したシラバス再構築を試行する。

3.成果発表(30分)

 グループ討論をもとに得られた成果を、作成されたシラバスを用いて発表し、相互評価・意見交換を行う。

(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)