【No.552】
大学教育のグローバル化とは-日本高等教育学会第18回大会参加報告-

○●○大学教育のグローバル化とは-日本高等教育学会第18回大会参加報告-○●○

 6月27日(土)、28日(日)に早稲田大学早稲田キャンパスで開催された第18回日本高等教育学会に参加した。大会では、①学生と社会、不適応学生、学生参画など学生をテーマとしたもの、学習成果、学士課程教育などのアウトカムズやカリキュラムをテーマにしたもの、大学とガバナンス、大学の経営体制などの大学の管理運営をテーマにしたもの、大学教授職、大学職員などの教職員論、教育の質保証、大学評価など非常に多岐にわたる分野での自由研究発表、②学会としての課題研究(「高等教育政策の変容」、「日本の大学院教育を考える」)発表、③公開シンポジウム「高等教育のグローバル化の批判的検討」、④IRワークショップ「日本型IRの多様性をどう見るか」と非常に盛りだくさんな内容であった[1]

公開シンポジウムでは、塚原修一氏(関西国際大学)が、「グローバル化と国際化はどう異なるのか、グローバル化の光と影、国際化における誤解、日本における課題」、太田浩氏(一橋大学)が、「日本の大学国際化に関する政策動向、受入れから送出しへの政策的シフト、大学国際化の課題」、杉村美紀氏(上智大学)が、「国際移動時代の高等教育の変容、国際高等教育ネットワークの意義と課題、アジアにおける国際高等教育の方向性」という視点から、それぞれ報告が行われた。

 現在、金沢大学においてもスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)を中心にグローバル化を進めているが、同事業に採択されたことだけでグローバル化した大学とは言えない。SGU構想調書ではグローバル社会を牽引する人材育成が構想の中心とされており、教育重視の研究大学としての経験、実績の上に人材育成を進めていくことが求められる。SGUに限らず昨今の文部科学省からの補助金全般に共通する悪い点ではあるが、常に、数値目標部分だけが一人歩きし、数値目標が達成できれば事業全体が成功したかのような評価が行われるが、それだけで本当に事業全体の目標が達成されたと言えるわけではない。先ず、教育現場に関わる教職員自身がグローバル社会を牽引する人材育成のために具体的に求められることは何かを十分理解し認識を共有することが必要である。次に、共通認識に基づき、全学レベルで教育システムの整備が行われ、その上で初めて、数値目標と繋がる学生の達成度評価が可能となる。この流れを今一度確認するためにも、今大会の公開シンポジウムでの、塚原氏の報告について簡単に紹介させていただく。

塚原氏は、高等教育におけるグローバル化とは、「経済、技術、科学の幅広い趨勢で、高等教育に直接の影響をおよぼし、今日の世界では不可避なもの[2]」((globalization is characterized by “the broad economic, technological, and scientific trends that directly affect higher education and are largely inevitable in the contemporary world)”(Altbach, 2006, p. 123)) [3]、「一方で、(高等教育における)国際化とは、「中等後教育の目的、機能、提供において、国際的、異文化的、地球的な時限を統合する過程」(Internationalization, meanwhile, is defined as a “process of integrating an international, intercultural, or global dimension in the purpose, functions, or delivery of postsecondary education”(Knight, 2003, p. 2)[4] )と説明した後、グローバル化として、「国民国家の統合に対する挑戦、高等教育の変容、市場競争による高等教育機関の分割と統合、社会関係の変容、研究大学の役割の重要性」を、国際化として、「世界市民の意識、科学と研究の国際協力、運営の分散、国際的な起業主義、新自由主義経済、新組織主義」をキーワードにあげられた。これらのうち、「研究大学の役割の重要性」、「科学と研究の国際協力」などはSGUと絡めて比較的理解しやすいが、残りのキーワードについてもSGU遂行のためには、金沢大学教職員としてある程度の認識共有を目指す必要があるように感じた。

また、欧州での高等教育国際化経験に基づく手段が目的と化した9つの誤解(de Wit 2011)[5]についても紹介[6]され、現在進められているSGU等の政策は、大学、学生、および、卒業生が今後の世界において生き残るためにはグローバル人材育成が必要という解答には繋がるが、下記の9つの誤解が、グローバル化の帰結としての日本に課された課題への解答になり得るのかという疑問が呈された。

1.  英語による教育(EDUCATION IN THE ENGLISH LANGUAGE)

2.  外国での学習と滞在(STUDYING OR STAYING ABROAD)

3.  国際的な内容・名称の科目の提供(AN INTERNATIONAL SUBJECT)

4.  多数の留学生の受入れ(HAVING MANY INTERNATIONAL STUDENTS)

5.  留学生が集められなくて国際化の実があがらないこと(FEW INTERNATIONAL STUDENTS GUARANTEES SUCCESS)

6.  上記の諸経験が学生の異文化的・国際的な力量を保証するという単純な思考(NO NEED TO TEST INTERCULTURAL AND INTERNATIONAL COMPETENCIES)

7.  国際的な提携を拡大すればよいと考えること(THE MORE PARTNERSHIPS, THE MORE INTERNATIONAL)

8.  高等教育はもともと国際的なものだとみること(HIGHER EDUCATION —INTERNATIONAL BY NATURE)

9.  国際化を到達すべき目標と見なすこと(INTERNATIONALIZATION AS A PRECISE GOAL)

手段が目的化することは、政策誘導として避けられないとしても、今後、継続的に行われる学生向けSGU説明会においては、数値目標に加えて、もう少し深く、丁寧になぜグローバル人材としての能力を身につけなければならないのかについて説明が必要なのではないだろうか。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)



[1]http://www.waseda.jp/assoc-jaher2015/index.html

[2]日本高等教育学会第18回大会発表要旨集録p.236

[3]Altbach, P. G. (2006). Globalization and the university: Realities in an unequal world. In J. J. F. Forest & P. G. Altbach (Eds.), International handbook of higher education (Vol I, pp. 121–140). Dordrecht, The Netherlands: Springer.

[4]Knight, J. (2003). Updating the definition of internationalization. International Higher Education, 33(Fall), pp. 2–3.

[5]Hans de Wit, "Internationalization of Higher Education: Nine Misconceptions", INTERNATIONAL HIGHER EDUCATION –NUMBER 64 SUMMER 2011 Pages 6-7.

[6]日本高等教育学会第18回大会発表要旨集録p.237