【No.547】
資格枠組構築の取り組みについて

○●○ 資格枠組構築の取り組みについて ○●○

YAMAZAKIプラン2014においても示されている、「グローバル化する社会を積極的にリードする人材の育成」そして、そのための「教育の国際通用性の向上」は本学の重要な課題となっている。教育プログラム、学位等の国際通用性向上を図るための一助として、またカリキュラムマップ・カリキュラムツリー、学習成果について、国際通用性の点から検証するための参考情報として、欧州のTUNING Educational Structures in EuropeからSubject AreasとSpecific Competencesの参照基準が提供されているほか(本センターニュース500号)、前号では、金沢大学版チューニング(TUINING)の進め方として、参照とすべき国内外大学の教育プログラムとそのDP、学習成果等も示した上で、具体的な作業内容について丁寧な紹介がなされている。こうした教育の国際通用性の向上のための取り組み(道具)には、他にも欧米を中心に着々と整備されつつある国家資格枠組(National Qualification Framework)も、国際通用性をもった教育の質向上という意味では、有益な資料になると思われる。

東南アジア、および韓国においては、欧米の取り組みを参考に、国家資格枠組および国家職務能力基準(National Competency Standards。以下NCSとする)を制定し、それらを実質化するためのさまざまな環境整備が進んでいる。簡単に説明すると、(企業)各現場で職務を遂行するために要求される知識・技術・素養などの内容を国家が産業別・水準別に体系化しまた資格化することで人材養成と(企業からの)採用にあって活用できるようにするものである。ここでは韓国での近年の動向について簡単に紹介したいと思う。

開発の背景として、職業教育・訓練や資格制度と企業の現場とが乖離しているため、企業側が採用後に相当な訓練費用を要していることや、一部で資格取得が個人の職業能力向上に必ずしも結び付かず、不要ないわゆるスペック競争をもたらしているといったことも批判されてきた。また能力中心という社会を実現するねらいもあり、企業現場の職務中心の訓練資格制度に変えていくため、その開発に着手することになった。

現在の朴政権においては、公約の中に中核として掲げられ、NCS基盤の教育課程開発や資格試験改革、さらに長期的には資格と学位、教育経歴や職務経歴を体系的に連携させていく国家資格体系(NQF)の構築につなげていきたいと考えている。NCS開発に、2002年以来すでに10年を要している。NCSの開発は雇用労働部(日本の経済産業省も相当)が、活用においては高校と大学を管轄する教育部(日本の文部科学省)が担っている。またNCSを基礎とする訓練プログラム開発や国家技術資格との調整において、雇用労働部が担っている。このように、NCSの開発方針、様式、産業部門別・水準別の体系化を国家(政府)が主導的に関わっており、またNCS基盤のトレーニング・モデル事業が政府の予算支援の下、雇用労働部、教育部、専門機関との間の実務協力によって進められている。

 

NCSは、大分類基準で機械・建設、電気電子、材料、製油分野な理工系を中心に多く開発されてきている。細部として883を想定し、2014年中の完成を目標としている。NCSに続き学習モジュールの開発があり、数年前より実業系高校と専門大学でその教育活用のための研究[i]およびモデル実践が進められている。

   NCSの現場での活用・促進は、まず実業系高校と専門大学(日本の短期大学に相当)の教育課程を改編するところから始めている。技術分野も特性化し、二級、三流と思われていた分野を一流に引き上げるというねらいがあり、この点で実業系高校もレベルアップを図ろうとしている。韓国では、ドイツの制度をベンチマークし、政府の支援を受けているマイスター高校では、教育課程においても、すでに一般高校より企業が求める課程にフォーカスをあてている。また大手企業だけでなく、中小企業もマイスター高校出身の卒業生を好んでいるという傾向がでている。さらに、複数の特色ある高校と専門大学の一部をモデル校として運用することを計画している。また、専門大学の教育課程についても、来年からは必須的に適用することを検討している。大学の財政支援・制度とつなげて、各専門大学さらには四年制大学についても適用範囲を拡大する計画であり、国から財政支援を受けたいという希望があれば、NCS基盤の教育課程に改編する必要が出てくることになる。

上記の改革は、資格制度(の改編)とも大きく関連してくる。例えば、民間レベルで開発・管理している民間資格(TOEIC,TOEFLなど)、また企業内でのみ有効な企業資格がある。民間資格の一部の資格については、国から承認を受けた場合、国の資格と同等に扱われ、たとえば、公務員採用試験で優遇措置が受けられる。また、NCSを技能士、産業技能士、技師の国家技術資格に適用することが計画されている。具体的には、2013年から2015年にかけ、NCS開発と連携し、能力単位別のモジュール型の出題基準の開発を進めていくことになっている。

さらに、現場の仕事を中心に職業教育・訓練と資格が有機的に連携するように、課程履修型制度の導入が検討されている。訓練機関、高校・専門大学において、ある特定課程を履修をした場合に資格を与えるもので、国家資格の中で、例えば技能士と産業技士に限定し、課程履修型を優先的に実施することにしている。その他に、企業及び企業労働者に対する活用支援で、労働者からみて生涯キャリア開発または自己診断ツールとして利用できるようにし、企業のコア人材として成長できるように支援するのが目的である。また、政府および中小企業において、労働者を採用するさいにNCS基準に基づく採用や人事管理の制度を構築することを支援することも検討している。

大学内部(関係者)の大学教育の質向上の方策だけでなく、大学外の制度的連携や改革も同時に進められていて、学士課程教育プログラムにおける質保証のあり方を考える材料としても、今後もどの動向を追っていきたい。

(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)

 



[i] NCSに含まれるものとして、すべての職業に共通する基礎能力としての職務基礎能力(コアスキル)の養成を目的とする職業基礎能力課程があり、高校・専門大学・大学に適用するために研究開発とモデル事業が進められている。NCSは、上記の基礎能力と職業の細部能力が一緒になったものである。付け加えれば、職業基礎能力がこれまで高校と大学で教えられなかったわけではなく、例えば職業能力の中に、プレゼン能力が含まれているが、プレゼンテーション能力を高めるためのライティングとスピーキングの能力は、すでに学校において国語、スピーキング、ライティングという科目が存在しているわけで、職業能力という概念は、企業側から見た必要な職務能力とみることがいえる。