【No.543】
サバティカル研修の機会を得て

○●○ サバティカル研修の機会を得て ○●○

国立大学法人金沢大学の教育職員のサバティカル制度により、平成26年度(3月24日付けでサバティカル研修委員会より承認)のサバティカル研修の貴重な機会を得ることができた。本稿では、研修期間中の活動内容について簡単に述べていきたいと思う。

本人は、研究活動の一環としてアジアとくに韓国の高等教育について研究を長年継続しており、また比較教育学の観点から諸外国の高等教育を比較考察・分析を行っていることもあり、研修先を韓国(平成26年4月5日~9月26日滞在)およびドイツ(平成26年10月1日~平成27年3月26日滞在)で行った。

韓国ではかつての留学先でもあり、また高等教育研究を専門とする教員が数名活動されていること、また師範大学(日本でいう教育学部)附属の高等教育研究所が設置されているという好条件を理由に韓国でトップランクの一つと目される高麗大学校(私立)に活動拠点をおいた。サバティカル期間中に取り組む研究テーマとして、「韓国高等教育における職業教育システムと質保証に関する研究」と設定しており、上記研究を進めるために、関連の資料収集や訪問調査などに重点をおいた。

具体的には、①韓国の大学教育(4年制大学および日本の短大に相当する専門大学を中心に)における職業教育の状況や政府等の関連施策の動向の把握すること、②特定分野において高い実績を残している優秀大学や学科など人気学科を訪問・インタビューし、企業現場での実務等に有益なカリキュラム構成や教材開発のあり方を探ること、③教員の資質・企業等の産学連携など、体系的な専門教育をどのように提供しているのか(狭義・広義のキャリア教育)、また④とくに専門大学卒業生の高就職率を支える、進路・職業指導体制などの分析を明らかにするための各種情報の収集活動を行った。日本の大学においても、例えば社会人基礎力などといったキーワードを軸に、いかに大学側が企業・現場からの要求を最大限、教育課程に反映させ、能力開発に役立たせ、企業等が必要とする優秀な人材をどのように養成していくか、定期的あるいは各段階で学習成果を測定・分析(在学中の伸び、学生の属性と学習成果の関連等)し、その結果を学生や関係者へフィードバック(PDCAサイクル)するなど、大学教育(一面で職業教育)の質保証をシステムとして整備することが重要な課題となっている。私見では、日本と比較して教養教育はなおざり(卒業要件中に占める単位数の割合はかなり低い)でもともと職業志向的な専門教育に重きを置いている韓国の大学であっても、近年さらに職業基礎能力の涵養に対する関心が高まっており、程度・大小の差こそあれ各種の教育プログラム(例えば、グローバル・インターンシップ活動、職業基礎能力テストの開発と活用など)が進められており、非常に興味深く感じられた。

また上記の研究テーマとも関連しているが、並行して、ヨーロッパや豪州で先行している国家資格枠組制度を参考にした、韓国資格枠組(Korea Qualification Framework)および国家職務能力標準(National Competency Standard)の制度構築状況についても逐次情報収集を進めた。これらの制度枠組は、大学教育のグローバル化による教育交流にともない、世界共通のあるいは国家感・大学間で相互認定可能な大学教育の質保証の仕組み(大学評価・単位認定など)を確保する取り組みの一つの基礎となり得るものである。達成目標(数値)を設定し、大々的に大学教育のグローバル化・国際化を推し進めている韓国では、上記の枠組構築にも精力的に力を注いでおり、やっと着手し始めた感のある日本にとって、大いに参考になると考えられる。

約半年間の韓国の大学での滞在により、少し日本の大学(あるいは大学教育)を相対的に外から観察できる場所に身を置くことができたわけであるが、短い期間ではあるが、大学をめぐる政策・改革とそれに対する大学・教員・学生の意識であったり(あるいは韓国の大学関係者からみた日本の大学の動きに対する意見を頻繁に聞くこともできた)、反応(行動)は大きく異なっており、非常に興味深く感じられた。

さて、10月からの後半のサバティカル期間は、ドイツ中部のカッセル大学に設置されている国際高等教育政策研究所(International Centre for Higher Education Research Kassel)に客員研究員として籍を置き、研究活動を進めた。

期間中は、上記の研究テーマに関連し、前半の韓国滞在において収集した情報の整理や読み込みを行い、また私の滞在を承諾していただき、職業教育に造詣が深くまた世界の高等教育動向にも広く精通している受入(責任)教授と定期的にミーティングを持ち有益なアドバイスを頂いたり、レポート作成や研究論文作成の準備に時間を注いだ。またヨーロッパの主要国における国家資格枠組制度、およびドイツを始めとする主要国の職業教育に関する基礎情報について情報収集を進めていった。ドイツに滞在することで、日本および研究対象としての韓国の大学内部の者としての立場からはまた少し距離を置いた形で、一定期間観察し、また所属先の教員や世界各国から集まっている大学院生などと時宜を得て意見交換などを行うなどして、ドイツ(ないしヨーロッパを合わせ鏡に)複眼的に考察することができ、とても重要な機会となった。

サバティカル研修を終えて、今後は研究論文作成や研究発表はもちろんであるが、研修期間中に獲得できた情報を活かす形で、本センターの活動内容として挙げられている「金沢大学(筆者注)全学の教育内部質保証システムを構築し、カリキュラム、教育方法、学習支援・学生支援方法の検証・評価、改善の支援を行うための教育質保証研究」に貢献していきたいと考えている。

(文責 評価システム研究部門 渡辺達雄)

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