【No.538】
大学教育の国際化

●○●大学教育の国際化●○●

 3月に入って、大学教育のグローバル化に伴うカリキュラム、授業実践、MOOC(Massive Open Online Course)の展開、教育質保証についての事例報告や提言が行われた報告会やフォーラムが学内外で開催された。いくつか印象に残った報告等を以下に紹介したい。

 3月2日、本学のスーパーグローバル大学創成支援事業の一環として、「英語による授業」先進事例報告・国際教養大学での取り組みについて、国際教養大学教授・国際教養教育推進センター長の前中ひろみ氏、同講師の竹本周平氏による講演が行われた。前中氏からは国際教養大学の設立経緯とともに、低年次での徹底した英語教育に基づいて英語による専門教育が行われているカリキュラム、卒業要件単位として認められる留学による18単位の認定方法など、詳細に説明していただいた。竹本氏からはご自身の専門科目「International Relations」の授業のデザインと英語での授業に対する学生の心理的不安を軽減させるためのノウハウについて紹介いただいた。日本人学生と留学生との混成クラスでの「英語での授業」である前にグローバル人材が備えるべき「解が明確ではない課題」の解決能力の養成を意図した「論争のあるStudy questions」を授業冒頭に提示することから始める授業であり、いわゆるリベラルアーツ教育の授業モデルといえるであろう。海外の大学で使用されている教科書、日本国憲法などの英語版、国内の重大ニュースの英文記事などを教材として用いる一方、40名のクラス規模を前提に、既習内容や教科書の内容を学生に説明させる、「抽象的な概念を実際の事例に適用させること」を意図したテーマ、例えば「国際関係論の三つのパラダイムを用いて現在の東アジアの国際関係を説明せよ」「対外政策決定論の四つの分析レベルを用いてアメリカの対中国政策を分析せよ」について授業中のグループ・ディスカッションや学期末プレゼンテーションを行わせるなど、学生に考えさせることを重視した双方向授業になっている。アクティブ・ラーニングとは「問いに基づいた」伝統的なリベラルアーツ教育の手法であることを示す事例である。

 3月13、14日、第21回大学教育研究フォーラムが京都大学で行われ、アクティブ・ラーニングや反転授業などの授業実践や学習成果の評価手法についての数多くの実践研究報告が行われた。以下に、「大学教育の国際化」をテーマとした基調講演の概要を紹介する。文部科学省高等教育局国際企画専門官で国際教養大学の設立にも関わられた佐藤邦明氏による基調講演「グローバル時代における大学教育の国際化を考える―政策的見地を踏まえて―」は大学教育の国際化がいかに喫緊の課題であるかを切実に考えさせるものであった。大学生を対象にしたアンケートでは「自分をダメな人間だと思う」と答えた回答率が1980年から2011年では3倍に増加し、また「グローバル人材となるにはもう遅い」とする回答率が50%を超えるなど大学生のネガティブ思考がデータとして顕著になる一方、グローバル展開する企業では日本人、外国人の区別なく世界中の企業拠点からプロジェクト要員を選抜するなど人事戦略のグローバル化が進む現状について述べられ、高等教育における世界で通用し戦える能力を持ったグローバル人材養成への強い期待と高等教育の国際化政策立案の現場の切迫した思いとが伝わってきた。佐藤氏の講演での最大の力点は、大学教育の国際化がさらに進展し学生のグローバルな流動が起こるとき、教育の質保証、特に学習成果の大学間での互換性を担保することの重要性であったと思う。新幹線が全国にくまなく整備された後の人の流れの動態を予測することは難しいかもしれないが、学生のグローバルな流動は、十分な環境整備が行われれば、国内外の各大学の研究レベルや、国際通用性を持った能力を養成する教育が行われているかどうか、より直接的には世界ランキングに強く影響を受けるであろう。教育については、学生の送り出し、受け入れの環境整備を進めるとともに、何より批判的思考力や課題探究・課題解決力を養成する教育を行っているか常に自問し必要な改善を行うことが求められているとの思いを強くした講演であった。

 佐藤氏の基調講演に続き、東洋大学教授の芦沢真五氏による報告「現代社会における留学の意義とインパクトを再考する―多様化する海外学習体験と学習成果分析―」、一橋大学教授の落合一泰氏による報告「教育の国際化と学生の国際化-チューニングと学外学修の試み」、京都大学教授の飯吉透氏による報告「主体的な学びの喚起と持続のためのオープンな学習環境を考える―21世紀のジョン万次郎をどう育てるか―」が行われた。飯吉氏の報告では、MOOCS(Massive Open Online Course)やオープンコースウエア(OpenCourseWare)について、京都大学のオープンコース科目「生命の化学:Chemistry of Life」を例として上げられ、知識伝達のためのICT教材から批判的思考力や創造的思考力(仮説形成、アイデア創出)の養成を意図したオンラインコンテンツへと進化しつつあり、大学教育の国際化を進める学習環境としての意義とさらなる可能性を示唆された。

 本学においてもスーパーグローバル大学創成支援事業として研究・教育の国際化を加速させつつある。教育におけるその成否はGS科目の開発に委ねられるであろう。

(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

 

●○●文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業」

金沢大学キックオフシンポジウム●○●

1.テーマ 金沢大学〈グローバル〉スタンダード確立への挑戦

2.日時 平成27年3月22日(日)13:30~17:15(懇談会17:40~19:30※会費3,000円)

3.場所 ホテル日航金沢(石川県金沢市本町2-15-1)

4.プログラム

   13:30-  開会挨拶

   13:35-   来賓挨拶

   14:05-   大学近況報告/山崎 光悦(金沢大学長)

   14:25-   事業概要説明/向 智里(金沢大学理事・副学長)

   14:35-   基調講演/明石 康

        (公益財団法人国際文化会館理事長、元国際連合事務次長)

      15: 30-  パネルディスカッション

         明石 康(公益財団法人国際文化会館理事長)

         John Barker(タフツ大学学生部長)

         浦野 邦子(コマツ執行役員人事部長)

         大谷 実(金沢大学附属高等学校校長)

         柴田 正良(金沢大学理事(教育担当)・副学長)

   17:10-   閉会挨拶

5.参加申込 事前申込制。 http://sgu.adm.kanazawa-u.ac.jp/