【No.537】
アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その11):なぜアクティブ・ラーニングなのか、教学改善を進める旗手は誰か

○●○ アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その11):なぜアクティブ・ラーニングなのか(AP第2回アクティブ・ラーニング研修会参加報告)、教学改善を進める旗手は誰か(大学教育改革フォーラムin東海2015参加報告) ○●○

「なぜアクティブ・ラーニングか、アクティブ・ラーニングを通して何を目指すのか」(溝上慎一 京都大学教授)講演を軸に、3月4日大学教育再生加速プログラム(AP)事業のキックオフの一環とした第2回アクティブ・ラーニングFD研修会が開催された。溝上氏の講演では、冒頭、大学教育の役割に若者を社会につなげる<トランジション>の概念提示がなされ、幸せに力強く生き働いていくために他者・チームと協働することと講義脱却の関連が示された。盛岡三高の世界史における学生参加型授業、山梨大学工学部の反転授業の様子には、生き生きと立ち上がる生徒・学生の主体性を感じる。後期近代における大学の役割には、社会につながらない若者が増えている状況の下で、多様なキャリアパスに力強く向かう主体の形成が求められているのである。聞いている「講義」からの脱却には、書く・話す・発表するという形態定義からさらに、能動的活動を積極的に定義し<学生の学びの成長>に4年間の大学教育をいかに位置づけるか、学習環境の整備、教学IRによる学習成果可視化の相乗が求められる。本研修を通じて、アクティブ・ラーニングを進める金沢大学の教育モデルへの大きな期待とエールをいただいた。

では、教学改善を含むこれからの大学教育をかたちづくる主体は、どこにあるのであろうか。

3月7日に開催された大学教育改革フォーラムin東海2015(於名古屋大学東山キャンパス)は、通算10回目となる東海地域の大学を中心にした実践報告の場である[1]。基調講演「大学教育改革を進めるために必要なものとは」(秦敬治 追手門学院大学副学長)では、教学改善に向けた旗手を誰がどのような視点をもって担うのかを、国内で最も英雄的な推進力をもつリーダーのひとりである秦氏から直接に伺う機会となった。教育とは何かという理念<なぜ我々がここにいるのか?>の追求が先立つものである。ディプロマポリシー(学位授与の方針)は、いまどの大学でも掲げている旗印であるが、その理念なき改革はありえない。大学・学部が自らの存在意義を問い、共有することが必要な視点である。旗手としては、大学理念ならば学長が、学部理念ならば学部長がというように、それぞれの教育理念単位であたることになる。リーダーシップを取るアクター(主体)に4種類(1)教員、(2)教育コーディネーター、(3)全学教育担当管理職、(4)教育企画スタッフを定義する。それらが教職協働の形を取りながら推進主体となり、愛媛大学の教育改革においては、(4)をセンター組織ではなく教育企画室として学長のブレーン組織として位置づけ、(2)をカリキュラム単位の総勢60名の教育コーディネーター制度として教学改善に責任をもつ。最後に、学生にいかに効果を与えるかに焦点化すること(筆者は、「学生を主語にすること」と受け止めた)から、すべての教員・職員・学生がともに考える場をつくることの経験とツールの一例を示したFDワークショップの事例は、教育理念の追求の理想形のひとつであるように感じられた。

なお、フォーラム内で行われたポスターセッションにおいて、当センターと共同研究を進めているTERADA.LENON社との研究成果を「アクティブラーニング入門における反転授業の実践」(共同発表:杉森公一、白嶋章)として報告した。WebClass(アカンサス・ポータル内の学習管理システム)を活用してのショートビデオ事前提示とICカード連携クリッカーを組み合わせた、対面教育のインタラクションを最大化する試みは多くの大学教育関係者の注目を集め、活発な議論を行った。本ポスター発表は、参加者投票により「優秀ポスター賞」に選定されたことを報告する。研究に助言と協力をいただいた関係諸氏へ感謝申し上げ、深い学びへ到達する実例を示された受講学生へ敬意を表する。

教学改善の姿はひとつではない。私たちは、学域・学類の文化・学術的多様性のもとに、対話的な教育開発の段階を歩むこと、すなわち大学教師自身が主体的なアクティブ・ラーナーとして学びを促しあう過程そのものが「アクティブ・ラーニング」の構造を取っていることに気づきつつある。この一年の教育・学習の「主体性」の正体を巡る旅路に出会った、多くの教員・職員・学生との出会いに改めて感謝を申し上げたい。

(文責 教育支援システム研究部門 杉森公一)

●○● 「英語のみで卒業できるコース」先進事例報告-首都大学東京での取り組みについて- (KU-GLOCS Act.0)のお知らせ ●○●

主催:大学教育開発・支援センター  共催:SGU企画・推進本部

日時:2015年3月18日(水) 15:00-17:00

場所:本部棟4階第3会議室(角間キャンパス)

講師:松浦克美氏(教授、都市教養学部理工学系生命科学コース、大学教育センター、高大連携室長)

趣旨:2015年4月から、都市教養学部の生命科学コースに卒業に必要な124単位をすべて英語の授業で取れる課程を新設する首都大学東京での取り組みについて、同コース教授である松浦克美氏に同課程の制度設計、運用方法等についてお話しいただく。

●○● 青野透教授(大学教育開発・支援センター)退職記念講演会参加報告 ●○●

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青野透教授は、大学教育開発・支援センター発足以来、第2代センター長、学長補佐を歴任され、長年にわたってセンターの活動と金沢大学に貢献されました。その功績を讃え、3月5日(木)に「今、学生のためにできること-教育・研究と学生支援―」と題しての最終講演が行われました。中教審の最新の答申(H26.12.22)を、高大接続・入試改革答申ではなく「多様性答申」とし、「主体性を持って多様な人々と協力して問題を発見し、解を見出していく」点に、自分と価値観を異にする他者と学びあい相互に刺激を与えながら成長する場を創る大学教育の未来を示されました。自由を認識し、享有し、又は行使するという人権の基本的な考えを、金沢大学教育の場で教員として実践されてきた青野先生の姿を間近にしてきました。私たちは代え難い学びの経験を一緒に積んで来られたことに感謝を申し上げ、そしてこれからも激励をいただきながら、教員一同センター諸活動に当たって参ります。

 

(文責 教育支援システム研究部門 杉森公一)



[1]名古屋大学高等教育研究センター[FD・SD教育改善支援拠点]主催、詳細はhttp://tokai-forum.jp/を参照。