【No.526】
障害学生への合理的配慮を考える-⑧神奈川工科大学のユニバーサルデザイン-

○●○障害学生への合理的配慮を考える-⑧神奈川工科大学のユニバーサルデザイン-○●○

 大学教育学会2014年度課題研究集会が、11月29日(土)・30日、神奈川県厚木市の神奈川工科大学で開催された。『大学とは何か』(岩波新書、2011年)の著者、吉見俊哉・東京大学副学長による基調講演「グローバル化する日本社会における大学教育の意義-通過儀式からキャリア・ビジョンの転轍機へ-」に引き続き、主催校企画による「現代日本の『学び』と『教養』教育」のほか、学会企画の三つのシンポジウム、「学士課程教育における共通教育の質保証」「FDの実践的課題解決のための重層的アプローチ」および「発達障害学生への学生支援・大学教育の役割」が開催された。私は最後のシンポで、「発達障害学生支援をめぐる法制とその基本思想について」を報告した。

 さて、会場となったK3号棟に入って驚かされたのは、エスカレーターを含め移動時でのバリアフリーや、教室内における車椅子用・ノートテイカー用スペースなど、ユニバーサルデザインの徹底である。この建物は、本年3月、神奈川県の「みんなのバリアフリー街づくり条例適合証」交付を受けている。県のHPによれば、「不特定かつ多数の者が利用する施設を公共的施設とし、高齢者や障害者等が安全かつ快適に利用できるようにするため、みんなのバリアフリー街づくり条例に定める整備基準への遵守を求め」、その「基準に適合した」建物に交付されているとのことである。

 そして、同キャンパス内のKAIT工房(「気軽にものづくりの楽しさを体験できる場所、創作活動専用の施設」)で私は素敵な光景を目にすることになった。広さ約2,000平米のガラス張りの建物で目立つ、100台を超える車椅子の存在である。朝日新聞2011年4月24日付「高校生も共に修理、車椅子を被災地へ 神奈川工大サークルが50台」では、次のように報道されている。「車椅子修理のボランティア活動をしている厚木市の大学生サークルが23日、震災復興支援のためのイベントを開き、高校生らと一緒に車椅子50台の修理や整備をした。依頼があり次第、被災地や避難先などに届ける。神奈川工科大学の「車椅子修理屋」は、近隣の福祉施設などで車椅子のメンテナンスに取り組むサークル。6年前、電動車椅子を勉強していた縁で施設の車椅子を修理するようになり、現在はタイや韓国など海外の施設にも活動の幅を広げている。この日は近隣の高校生や施設関係者ら約100人が呼びかけに応じて参加。老人福祉施設などから譲り受けた車椅子の整備にメンバーの指導を受けながら取り組んだ。まず宮城県栗原市の福祉施設に10台を発送した。その後も依頼のあった場所に届けることにしており、定期的にメンテナンスに訪れる予定」。

 サークル「KWR(K=Kanagawa (神奈川工科大学) W=Wheelchair(車いす) R=Repair(修理))車椅子修理屋」のHPによれば、「日本では、福祉制度を利用することにより車いすがいつでもどこでも利用出来ます。しかし、身体に合わせて車いすを製作することにより、成長にともない使えなくなる車いすがたくさん増えてしまい年間3万台の車いすが捨てられる」「一方、アジアでは、車いすを必要としている人が大勢いますが、常に車いすが不足している状態です。また、地雷や自然災害の被害のため施設、病院などでも更に車いすが不足」とのことで、「近隣の施設・病院などで使われていた中古車いすを預かり、学内で修理やメンテナスを行い、再生した車いすをアジア各国に贈ることをしている。2004年。中越地震、スマトラ沖巨大地震、被災地に車椅子支援、2012年スリランカに車いす寄贈訪問、2013年タイと韓国に車いす寄贈訪問などの実績を積んでいる」。

このサークルは、神奈川工科大学「夢の応援プロジェクト」の2003年以来の採択チームである。

プロジェクトは「学生の皆さんのものづくりにかける情熱をアシスト(活動経費支援)する制度です。このプロジェクトは、ものづくりなどに関する意欲的で自主的な学生プロジェクトを公募し、年間で10~20プロジェクトに、100万円を限度として活動資金を援助するというものです。活動経費支援をメインとしているものの、経済的アシストだけを目的としたものではありません。このプロジェクトへのエントリー、活動・会計報告書の提出、報告会などの活動を通して、卒業後に多くの皆さんが実社会で直面すると思われることを経験し、自身の成長へのステップになることも期待しています。エントリー書類とプレゼンテーションを基に支援額を決定していきます。」

<社会が求める問題発見解決型スペシャリストを育てます>という神奈川工科大学。授業外で、学生たちは、社会が求める問題を発見し見事に解決しています。しかも、100台の車椅子が誰にでも見えるところに置かれ、修理され、ノーパンクタイヤ(一台分5千円)が取り付けられるところが、近くを通る学生たちの目に入るのです。障害者のための道具について知ることは、当然、それを利用する障害者のことに思いをはせることにつながります。キャンパスをユニバーサルデザインで設計するだけでなく、そこで学ぶ学生たち自身の行動(アクティブ・ラーニング)による素晴らしい教育の場が用意されています。新しい器に時代が求める精神を盛った大学に感銘を覚えました。

おりしも、私は先月、濱田特任助教とともに、金沢大学角間キャンパス内で、入学時より電動車椅子を利用し来春に卒業する学生と一緒に移動しながら、本学のどこがバリアになっているかを、調べました。建物間、建物内、教室内、トイレ等々、障害者本人の立場からは、いたるところの小さな段差を含め、健常者からは想像のつかないたくさんのバリアがあることが分かりました。溝に置かれたグレーチングの目の幅が少し大きいだけで、車椅子のタイヤがすべり、通り過ぎるのに難渋しているなど、早急な改善点が見えてきました。斜面に立つ金沢大学、冬季は雪が積もる金沢大学では、障害者本人の意見をより丁寧に聞きながら、こまめにバリアフリーのための努力をしなければならないと痛切に感じています。(文責:教育支援システム研究部門 青野 透)  

 

●○● 手話カフェのご案内(年内は12月10日まで、年明けは1月7日から)●○●

「手話を学びたいと思っているけど、どうやって学べばいいか分からない?」という方、おられませんか。昼休みに気軽に学び始めませんか。「手話ってどんなの?」「ちょっと関心があるだけなんだけど」という人も大歓迎です。10月29 日に始まりました。時間は、12時15分から45分まで。中央図書館ブックラウンジが会場です。年度内は11/5,11/12,11/26,12/3,12/10,1/7,1/14,1/21,1/28,2/4(いずれも水曜日)開催。11月までは、指文字をしりとりゲームをしながら覚えたり、簡単な自己紹介の練習などをしてきました。講師役は、金沢星稜大学の手話サークルの学生が務めてくれており、ろうの学生、さらには、ろうの社会人の方も、学外から参加されています。お昼休みです。気軽に一度だけでも参加してみてください。企画・運営は、「石川県障がい学生等共同サポートセンター」の青野透(大学教育開発・支援センター教授)と濱田里羽(大学教育開発・支援センター特任助教)が担当しています。文部科学省「大学間連携共同教育推進事業」『学都いしかわ・課題解決型グローカル人材育成システムの構築』の一環でもあります。