【No.525】
アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その8):能動的学習を促す授業デザインとインタラクティブ・ティーチング

○●○ アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その8):能動的学習を促す授業デザインとインタラクティブ・ティーチング ○●○

中央教育審議会は、11月20日の第95回総会において「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」を諮問した[1]。小学校、中学校、高校での、それぞれ平成32、33、34年度以降の実施に向けて、平成28年度中に答申がまとめられる予定である。『新しい時代を生きる上で必要な資質・能力を確実にはぐくんでいくことを目指し』、(1)教育目標・内容と学習・指導方法、学習評価の在り方を一体として捉えた考え方(2)育成すべき資質・能力を踏まえた、新たな教科・科目等の在り方や、既存の教科・科目等の目標・内容の見直し(3)カリキュラム・マネジメントや、学習・指導方法及び評価方法の改善を支援する方策、という議論の柱が示されている。「何を教えるか」という知識の質や量の改善とともに、「どのように学ぶか」という学びの質や深まりを重視しており、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や,そのための指導の方法等、さらに「どのような力が身に付いたか」に関する学習評価の改善にまで言及している。私たちは、ティーチングからラーニングへの教育観、学習観、大学(学校)観の転換点に立っているのである。大学教育再生加速プログラム(AP)事業[2]において、テーマ複合型(アクティブ・ラーニング+学修成果の可視化)に採択された金沢大学は、教育法・学習法・評価法の探究によって、あらゆる小中高大へアクティブ・ラーニングの意義を啓発する責を期待されている。

中期計画および本事業の取り組みの一環として、11月4日に教育企画会議FD研修会を実施し、各学類の中核となる教職員の養成を開始した[3]。約40名の教職員が学類・部局を越えて集い、研修とワークショップにあたった。筆者によるショート・レクチャー「能動的学習を促す授業の背景と動向」では、講義か演習か、一方向か双方向か、自学か互学かといったニ項対立の議論を越えて、教員自らの言葉で、学生を主語にした学習活動=能動的な学習とは何かについて定義し、分類し、語れることを目指した。ここでは、『ただ「聴く」という学習を乗り越えた、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知的プロセスの外化(思考などを外に表現すること)』[4]をアクティブ・ラーニング(AL)の始点とする。スモール・アクティビティを伴う個人・ペア・グループ活動が、学習のふりかえり(外化)として使われるのであれば、AL手法は①ミニッツペーパーや小テストなどの学生参加型授業や復習を授業内に行う反転授業、②話し合い・教え合い・問題解決・図解・文章作成の技法などを取り入れる協同学習[5]、③研究活動に接続するような探究的なプロジェクト学習などに大別できることが分かる。

ショート・レクチャーで確認した知識や対話的議論に続いて、グループに分かれて自身のシラバスに能動的学習の方法を埋め込むワークショップを行ったが、それぞれの学問分野の適正に応じたシラバス改善例が研修成果として語られたことで、具体的なイメージが参加した教職員の間に生まれたのではないかと思う。本研修会で体験した知識(インプット)~対話(インタラクション)~創出(アウトプット)の授業展開はAL型の授業デザインそのものであること、そして、すべての学類が一堂に会した参加型FD研修会(実践的FD活動とも呼ばれる)が実施された初めての機会を持てたことを、あらためて強調したい。すべての資料と議論の様子、成果報告はアカンサス・ポータル特別コース「教職員研修等」(学内限定)で配信されているので、今後開催が予定されている学類ごとのFD研修会等の参考資料として、多くの方に視聴いただきたい。

ALを学ぶ学習資源は、いま急速に充実しつつある。11月19日から、あらゆる大学院生・大学教員を対象とした無料オンライン講座として「インタラクティブ・ティーチング」の配信がスタートし、全国各地から5,000人以上の受講生が、いままさに学んでいるところである[6]。8週にわたるシラバスを見ると、ALの定義と技法、学習科学、授業デザイン、シラバスの書き方、ルーブリックによる学習評価、大学教員のキャリアパスまで、体系的に新時代の大学教員に問われる知識と技能を習得できるプログラムとなっている。修了証を得るためには、週次の小テストとレポート提出が必要となるが、今年度末には多くの大学院生と大学教員が受講の学習成果を手に、新年度からの大学教育にあたることになろう。筆者も現在、Week1の受講中だが、ALの概念整理の確認、超分子化学の研究者による理系分野のAL実践事例への出会いなど、発見が多い。

教育学者の山口栄一がD.A.ブライ「大学の講義法」(玉川大学出版部、1985年)で述べた『どれだけの割合の学生が授業の目標にどれだけ到達したかに関する確かなデータに基づいて行っていこうとする。授業の目標を学生に知らせる、何ができるようになれば履修したといえるのかを、できるだけ学生に伝えようとする。』という大学教師の姿勢は色あせない。私たちが授業というドラマを通して伝えたいのは、感情が揺さぶられ、発見の喜びが湧き上がる体験であろう。

(文責 教育支援システム研究部門 杉森公一)

 

○●○ 第5回北陸地区大学・短大「連携FD」研修会 ○●○

日時:12月6日(土)13時00分~16時40分  会場:金沢商工会議所 ホール

テーマ:「大学と社会をつなぐキャリア教育」

講師:児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部教授 教育開発支援機構FD推進センター長)

概要:中部圏23大学(5短期大学を含む)の中部地域大学グループは、本選定事業を通し、自ら前に踏み出し、考え抜き、チームで働き、チャレンジする教育改革力の成長をめざし「アクティブ・ラーニングを活用した教育力の強化」「地域・産業界との連携力の強化」をテーマにさまざまな取組みを行っています。北陸地区5大学・1短大を結ぶ「連携FD」研修会は、互いの教育力の深化をはかる学びあいの場として開催してきました。第5回となる今回は、これまでの「連携FD」研修会を振り返り、これからの大学教育、キャリア教育の方向性を見つめます。大学と社会をつなぐキャリア教育をテーマに、法政大学キャリアデザイン学部教授児美川孝一郎氏をお迎えし、基調講演とパネルディスカッションを通して事例・手法・課題について議論し、学生の就業後の姿に光をあてるためのキャリア教育の未来を探ります。

詳細・申込期限(11月28日):http://www.kanazawa-u.ac.jp/events/14/12/img/1206.pdf



[2]日本学術振興会AP事業 http://www.jsps.go.jp/j-ap/index.html および概要資料 http://www.jsps.go.jp/j-ap/data/sinsei/jigyogaiyou.pdf 参照。

[4]溝上慎一『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』東信堂、2014年。ALの語を提唱した著者による、決定版といえる。

[5]エリザベス=バークレイら(安永悟 訳)『協同学習の技法』ナカニシヤ出版、2009年。米国で実践されている30の技法が実例とともに紹介されている、大学教師向けの必読書。