【No.524】
キャリア教育推進および実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関について

○●○キャリア教育推進および実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関について○●○

平成25年5月28日の教育再生実行会議[1]で出された「これからの大学教育等の在り方について(第三次提言)」[2]では、大学の在り方、グローバル人材育成が主題となっており、以下の5つの柱が立てられている。

1.    グローバル化に対応した教育環境づくりを進める。

2.    社会を牽引するイノベーション創出のための教育・研究環境づくりを進める。

3.    学生を鍛え上げ社会に送り出す教育機能を強化する。

4.    大学等における社会人の学び直し機能を強化する。

5.    大学のガバナンス改革、財政基盤の確立により経営基盤を強化する。

金沢大学が採択されたスーパーグローバル大学創成支援(SGU)もこの提言を具現化するための政策の一つである。

今回は、その中でも「3.学生を鍛え上げ社会に送り出す教育機能を強化する。」の中に書かれている「社会との接続を意識した教育の拡充・強化(キャリア教育、中長期インターンシップなど)」について紹介させていただく。3.においては、学生の学修時間の確保、学修成果の可視化、教育課程の体系化、組織的教育の確立など全学的教学マネジメントの改善や厳格な成績評価を行う大学への重点的支援を第一項目として打ち出している。それに続いて、「大学において、学内だけに閉じた教育活動ではなく、キャリア教育や中長期のインターンシップ、農山漁村も含めた地域におけるフィールドワーク等の体験型授業の充実を通じて社会との接続を意識した教育を強化する。その際、学生が働く目的を考え自己成長を促す長期の有給インターンシップを産学の連携により進めていくことも考えられる。また、国は、行政機関における中長期インターンシップの受入れを率先垂範して行うとともに、民間企業の就職・採用活動時期の後ろ倒しも踏まえ、国家公務員試験についても必要な措置をとるよう人事院に要請する。」、「大学・専門学校等が、地域の人材育成ニーズに応え、地域に貢献できるよう、地方公共団体や地域の産業界等との連携協力や、実践的な教育プログラムの提供などの取組を国が支援する。また、日本の伝統的な産業や優れた技術を伝承する職人等の養成に対する支援に取り組む。」と書かれており、企業、地域と連携してのインターンシップ、フィールドワーク重視の姿勢が明確に示され、大学に対して社会との接続を強く意識した教育を実施することを求めている。

この答申や中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月31日)[3]を受ける形で、文部科学省に「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」[4]が設置された。そこでは、「我が国の高等教育における実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の位置付けについて」が主たる検討事項とされている。同会議委員である冨山和彦氏(経営コンサルタント)が第一回目の会議で提出した資料では、ごく一部のトップ大学のみがグローバルで通用する極めて高度なプロフェッショナル人材輩出の役割を担い(G型大学)、その他の大学は、同会議で検討される新たな高等教育機関(L型大学)に吸収されるべきという議論が展開されている。一方で大学などの既存の高等教育機関に職業教育の充実を求め、もう一方で、新たに実践的な職業教育を行う高等教育機関を作ることを検討するという二面作戦が進められている現状を見ると、冨山氏の提言があながち現実離れではないようにも思える。

ちなみに、自民党においても政務調査会のもとにキャリア教育推進特命委員会を設置し、キャリア教育推進法案を議員立法で成立させるべく審議、検討が行われ、先日、党総務会の了承が得られたとのことである。キャリア教育推進特命委員会提言においても、

「1.子供・若者の志と夢をはぐくみ、自分の人生を組み立てていく力をつけさせる

キャリア教育の推進」、「2.企業のニーズを反映した実践的かつ即戦力を育てる職業教育の推進」として、インターンシップが重要であることや、学生、社会人のキャリアアップや再チャレンジに資するモデル・カリキュラムの開発(企業オーダーメード型)・導入等、実践的な職業教育への支援が謳われている。また、これらの動きは、先ほど厚生労働省から発表された大卒3年目の離職率が32.4%と前年度(31.0%)より上昇していることとも関係がある[5]

このように大学と職業のつながりが強く求められてきている時代であること、および、これまでの文部科学省を軸とした高等教育政策推進だけでなく、教育再生実行会議、自民党、産業界などが要望を出し、政策として実現されるという新しい高等教育政策の進め方が大きな流れになっていることを個々の教員が認識することが重要である。もちろん、今後の高等教育政策においてG型大学、L型大学の構想が実現するかどうかは全くわからないが。SGUに採択されたことで、金沢大学が冨山氏の考えるところのG型大学として生き残る土俵に踏みとどまったことは喜ばしいことではある。今後、SGUにおける目標達成は社会との公約であることを自覚し教育研究活動を行うことが10年後、30年後、50年後もグローバル人材を輩出し続ける金沢大学の基盤を構築するために必要である[6]。この基盤構築が進まなければ、職業教育担当のL型大学になってしまう危険性もあることも自覚しなければならない。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)



[1]http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/

教育再生実行会議は、文部科学省に設置されている中央教育審議会とは別に、内閣の諮問機関として内閣官房が事務担当となっている会議であり、大学関係者は会議有識者の少数派である。しかし、中央教育審議会とも協力することとなっており、その提言は非常に大きな影響力を持っている。

[2]http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/teigen.html

[3]http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1315467.htm

[4]http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/061/gijiroku/1352719.htm

[5]http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/24.html

[6]ちなみに、YAMAZAKIプラン2014でもVISION I においてグローバル化する社会を積極的にリードする人材の育成が掲げられている。