【No.522】
障害学生への合理的配慮を考える-その⑧授業外の障害学生-

○●○障害学生への合理的配慮を考える-その⑧授業外の障害学生-○●○

 紅葉に包まれたキャンパスで、11月1日2日3日と大学祭が行われた。毎年、顧問をしているサークルの一つ、MJS(モダン・ジャズ・ソサイェティ)のジャズ喫茶で昼食をとり、その後で、もう一つのメロメロのアカペラを聴くことにしている。さらに今年は、アカンサス駅伝での応援と、合気道部の演武を見ることが予定に入った。

 駅伝は広い角間キャンパスの中央地区と南地区を利用して開催され、今年が第9回目。私が応援するのは、毎朝、始発のバスで一緒になる青年である。学生ではない。特別支援学校の卒業生で、清掃会社から派遣されている。昨年のアカンサス駅伝で走者の中にいることに気づき、話をするようになった。彼は今年も、どの参加者にも負けないスピードで走り抜けた。

 そして、体育館柔道場での合気道の演武である。一年生部員の一人である聴覚障害学生から誘われた。私は、合気道を見るのは初めてである。稽古着姿の学生は皆、凛々しく見える。40年以上も前、同好会ながらサッカーをしていた経験から、体育会系のサークルで活動することの厳しさと楽しさを思い出した。いよいよ、当該学生の団体演武である。授業のときとは違う顔つきに、<そうなのだ、これも大学生活を謳歌するということの一つなのだ>と言ってあげたくなった。授業はもちろん大事である。だが、学生は授業外でたくさんのことを経験し、成長する。障害の有無には関係ない。自分を変えよう、今の自分にないものを求めよう、その姿勢こそがあらゆる学びには不可欠である。うらやましく思うと同時に、こうした冒険心の意味を今の私に感じさせてくれた学生に感謝しながら、スマフォのカメラで、彼の姿を撮影し、ラインで送った。

 さて、本学が代表校である文部科学省大学間連携共同教育推進事業「学都いしかわ・課題解決型グローカル人材育成システムの構築」では、障がい学生等支援グループとして、大学間連携での障害学生支援に取組んでいる。その中で、金沢星稜大学の二人の聴覚障害学生と知り合いになった。二人は、いずれもアスリートである。本年7月に開催された日本聴覚障害者陸上競技選手権大会では、1500mで森光佑矢君(人間科学部スポーツ学科1年)が1位、800mで沖田耐芽君(同2年)が2位と輝かしい成績を収めている(http://www.seiryo-u.ac.jp/u/new/07232014.html)。

 そして、この星稜大学の二人が、先日、本学で、手話の講師役を急遽務めてくれることになったのである。

 10月29日(水)に、県内では初めての「手話カフェ」の試みが、本学中央図書館ブックラウンジで始まった。<手話を少し覚えたので使ってみたいという人、こちらへどうぞ。「手話を学びたいと思っているけど、どうやって学べばいいか分からない!?」という人には、初歩の学び方と、手話の本を紹介します。「手話ってどんなの?」「ちょっと関心があるだけなんだけど・・・。」という人も大歓迎です。去年までは手話が出来なかった教員と学生が、待っています。気楽にお越しください>との案内を出した(時間は、12:15~12:45、年度内は11/5,11/12,11/26,12/3,12/10,1/7,1/14,1/21,1/28,2/4に継続開催予定(いずれも水曜日))。企画・運営は、大学間連携事業で開設された「石川県障がい学生等共同サポートセンター」であり、担当は、私と濱田里羽・当センター特任助教である。狙いの一つに、手話初心者である本学聴覚障害学生にとって、これからの大学生活で、キャンパス内に少しでも手話の分かる学生あるいは教職員が居れば心強いのではないかとの思いもあった。

 当日、数人でも参加があればいいと思いながらブックラウンジで待っていると、次々に学生たちがやってきて、最終的には20名を超えることになった。最近めきめき手話の腕を上げている濱田助教だけに手話初心者への手ほどきを頼るわけにはいかず、私は、出席者の中にいた上記の星稜大学の2名の聴覚障害学生に、その場で、講師役を頼んだのである。

 教える立場になると、人は、はりきるものである。聴覚障害学生たちは初対面の本学の学生たちを相手に、それぞれのテーブルで手話を教え始めた。手話は目で見る言語である。一番いいのは、ろう者の手や指の動き、顔の表情を間近で見ることである。ろう学校出身の二人は、手話の教え方を学んではいないと思われるが、本学の学生に丁寧に教え始めたのである。時間を忘れて1時半くらいまで習っていた学生もいた。ネイティブがつきっきりでの最も優れた手話入門となった。

他大学から貴重な昼休みの時間にわざわざ来てくれていたことにも驚いたが、結果として手話カフェの第1回を成功裏に終えることができたのは、濱田助教と二人の他大学聴覚障害学生のお蔭であった。障害の有無に限らず、学生たちは誰かに教える役割を与えると頑張る。アクティブ・ラーニングの手法として、私はペア・ワークやグループ・ワークを多用する。教えられるばかりの授業は実は誰もが嫌で、数分でも自分も教える立場になれば、そこでやる気がでる。教え手が真剣に伝えようとしていることが分かれば、誰でも必死で学ぼうとする。その当たり前のことを他大学の障害学生に確認させられた、第1回手話カフェとなったのである。

 大学設置基準は、「第四十二条の二 大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする」と規定する。厚生補導においても、社会的・経済的自立に必要な学生の能力を培うことが大学に求められている。障害学生こそ、サークル活動でのびのびと授業以外の楽しみや得意なことを見つけ、仲間づくりをしてほしいとも思う。そうした機会提供のため、一人の教員として支援や配慮をしていくことを続けたい。(文責:教育支援システム研究部門 青野 透)  

●○● 大学教育再生加速プログラム第1回アクティブ・ラーニングFD研修会のご案内 ●○●

日時:11月7日(金)14時45分~16時15分 

会場:角間キャンパス総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「アクティブ・ラーニングに求められるファシリテーション」

講師:三田地真実(星槎大学共生科学部・大学院教育研究科 教授)

概要:学生の能動的学習活動に注目するアクティブ・ラーニングは、大学教育における教師の役割を従来型の情報伝達者のみだけでなく学習支援者あるいはファシリテーターの役割まで拡張させようとしている。そこで、今回の研修会では『ファシリテーター行動指南書』(2013、ナカニシヤ出版)を出版され、大学教育を含む様々な場で先駆的な実践をされている星槎大学・三田地真実教授をお招きし、教室における大学教師の新たな役割について、参加者の方との対話を通して理解を深めることをねらいとしたい。