【No.518】
障害学生への合理的配慮を考える-その⑦再読「発達障害者支援法」-

○●○障害学生への合理的配慮を考える-その⑦再読「発達障害者支援法」-○●○

 後期の授業が始まった。今週前半の私の授業は、月曜日1時限薬学類・創薬科学類共通科目「生命・医療倫理」(自然科学1号館)2時限人間社会学域共通科目「大学・学問論」(人間社会第1講義棟)4時限法学類「法思想史」(その間に「ランチョン・ビブリオバトル」担当)、火曜日3時限目・4時限大学院医薬保健学総合研究科「助産学概論」(鶴間キャンパス)、水曜日4時限大学院人間社会環境研究科「法思想史演習Ⅰ」(総合教育1号館)5時限人間社会環境研究科「法思想史演習Ⅱ」と続く。この間、人権という言葉を何回使うことか。「大学・学問論」の授業でも大学で学ぶ自由を説き、助産学概論では代理母などを例に、女性の自己決定権を論じる。人権の視点からあらゆるものを見ようとするのは、既に職業病のようである。書物は、小説であっても授業で使えないかを意識しながら読んでいるし、ランチョン・ビブリオバトルのバトラーとして『北里大学獣医学部 犬部! 』(片野ゆか著、ポプラ文庫、2012年)を推薦し、動物の権利に言及する。

 さて、発達障害者支援法である。本年8月1日までの官報掲載の法律は、1,924にのぼるが、そのうち、総務省法令データベースによる検索の結果では、「○○者支援法」という名称の法律はこれだけである。(略称としては、「求職者支援法」職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(平成二十三年五月二十日法律第四十七号)と「拉致被害者支援法」北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律(平成十四年十二月十一日法律第百四十三号)がある)

まず、そもそもこの法律の目的は、発達障害などの用語の定義は、国・地方公共団体および国民の責務は、ということを再読時に、吟味したい。下線・太字は筆者によるものである。

(目的)第一条  この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とする。

(定義)第二条  この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

2  この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。

3  この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。

(国及び地方公共団体の責務)第三条 ・・・3  発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)の意思ができる限り尊重されなければならないものとする。

(国民の責務)第四条  国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならない。

これらの規定を受けての次の条文である。

(教育)第八条  国及び地方公共団体は、発達障害児(十八歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在学する者を含む。)がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにするため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他必要な措置を講じるものとする。

大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする。

さらに、この後に、

 (権利擁護)第十二条  国及び地方公共団体は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、権利擁護のために必要な支援を行うものとする。

と続く。

 私たち大学関係者は、とかく、第八条それも第2項だけに注目してしまいがちである。だが、発達障害者支援法は国民の理解や協力を求めており、大学も当然、学生への教育だけでなく、そうした国民教育の一端を、担うことになる。独立行政法人ならずとも、各大学運営においてモデルとなるような施策を当事者の声を聴きながら取る必要がある。

 第十二条の規定も忘れてはならない。これまで発達障害者が「その発達障害のために差別」を受け「権利利益を害」されてきたという事実を認めた上で、「国及び地方公共団体」に対して「権利擁護のために必要な支援」を義務付けているのである。さらに次のような規定もされている。

(国民に対する普及及び啓発)第二十一条  国及び地方公共団体は、発達障害に関する国民の理解を深めるため、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。

(専門的知識を有する人材の確保等)第二十三条  国及び地方公共団体は、発達障害者に対する支援を適切に行うことができるよう、医療、保健、福祉、教育等に関する業務に従事する職員について、発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保するよう努めるとともに、発達障害に対する理解を深め、及び専門性を高めるため研修等必要な措置を講じるものとする。

(調査研究)第二十四条  国は、発達障害者の実態の把握に努めるとともに、発達障害の原因の究明、発達障害の診断及び治療、発達支援の方法等に関する必要な調査研究を行うものとする。

 法律は、まず目的を確認し、各条文も全体の中において読まねばならない。この法律は、平成十七年四月一日施行である。当ニュースNo514(9月8日号)で取り上げた障害者差別解消法の成立前に、既にこのような法律が効力を持っていたのである。確かに障害者差別解消法は、罰則が無く、理念的な性格が強い法律ではある。けれども、条文を子細に読めばその持つ、人権尊重に向けた社会的影響は大きいものであることを指摘しておきたい。(なお、No514(9月8日号)掲載の「障害学生への合理的配慮を考える-再読「障害者差別解消法」」にシリーズ番号を付すのを怠っていました。「障害学生への合理的配慮を考える-その⑥再読「障害者差別解消法」」となります。)

(文責:教育支援システム研究部門 青野 透)