【No.515】
学習成果(Learning Outcomes)検証に基づく教育改善―他大学の事例

●○●学習成果(Learning Outcomes)検証に基づく教育改善―他大学の事例●○●

 9月10日に開催された東北大学高度教養教育・学生支援機構の内部組織である教育評価分析センターのキックオフセミナーに参加したのでその概要について報告する。東北大学では、今年度4月に教養教育院、高等教育開発推進センター、国際教育院、国際交流センター、グローバルラーニングセンター、高度イノベーション博士人財育成センターを高度教養教育・学生支援機構に統合している(センターニュースNo.479 (2013年12月、センターHPに掲載中)ですでに概要を紹介している)。教育評価分析センターは新入生調査、卒業生調査、学習経験調査(学士課程レベル、大学院課程レベル)、卒業生調査、学生生活調査、雇用者調査、教職員調査の体系的な設計・実施・分析を行い教育の効果検証・質向上を担う。今回のセミナーでは、まず教育評価分析センターの杉本和弘氏が学修成果測定をめぐる国際動向について解説された上で、昨年3月に行われた平成24年度卒業生を対象とする「第1回東北大学の教育と学修成果に関する調査」に基づいた学部別の学修成果の要因分析、工学部・工学研究科における6年一貫教育と学修レベル認定制度の開発、理学部物理学科・宇宙地球学科におけるデータに基づく教育改善の取組について報告が行われた。また、北海道大学からの報告があり、平成24年度から行われている卒業生調査に基づく学習成果検証の取組について紹介された。以下、東北大学における卒業生による学修成果自己評価の調査分析のデザインに絞って紹介するとともに、本学が平成24年度から行っている全学での学習成果検証のそれと対比したい。

 東北大学が平成24年度卒業生を対象に行った学修成果に関する調査では、「入学時点と現在とを比べて、あなたの能力や知識はどのように変化しましたか」という設問において、「幅広い教養」「分析力や問題解決能力」「専門分野や学科の知識」「批判的に考える能力」「リーダーシップの能力」「他の人と協力して物事を遂行する能力」「異文化の人々と協力する能力」「地域社会が直面する問題に関する知識」「国民が直面する問題に関する知識」「文書表現の能力」「外国語の運用能力」「プレゼンテーションの能力」「数理的な能力」「コンピュータの操作能力」「時間を効果的に利用する能力」「グローバルな問題に関する能力」、以上16の学修成果を設定し学生に自己評価させている。これらの学修成果の自己評価(5段階)の要因として1)学習機会(15項目、4段階)、2)学習経験(13項目、4段階)、3)満足度(15項目、4段階)を仮定し、学修成果の達成度自己評価との相関を分析し、有意な要因を抽出している。仮定された要因の例をあげると、1)学習機会については、「実験、実習、フィールドワークなど体験」「学生自身が文献や資料を調べる」「学生が自分の考えや研究を発表」「授業中に学生同士が議論する」「授業で検討するテーマを学生が設定」など、アクティブラーニングの経験を問う設問が含まれている。学修成果の要因分析において、参考となる取組である。

 報告後の議論では、学習成果に関する学生による自己評価をはじめ、様々なデータの収集が可能であるが、いかなるデータからカリキュラムや個々の授業科目の改善に結びつけるためにどのような情報を抽出すべきか、そもそもデータに基づいた教育改善とは可能かという本質的な問いについて意見交換がなされた。これらは今後の重要な課題であるとの教育評価分析センター長の関内隆氏および副機構長の羽田貴史氏による指摘をもってセミナーを終えたが、データに基づいた、いわゆるIRの手法による教育改善の具体例が乏しいことを示唆している。

この問いに対して本学の学習成果検証プロセスのデザインは一つの解答を示しているように思える。本学の学習成果検証は、カリキュラムポリシーを具体化した各学類の教育プログラムの学習成果と授業科目の学習目標とのマトリックスであるカリキュラムマップの検証を目的としてデザインされており、学習成果と履修科目の学習目標の学生による達成度自己評価(4段階)のデータが収集される。得られたデータは教務システム内で回答した学生の履修科目の成績評定と対応づけることができるため、1)履修科目の学習目標の達成度自己評価と成績評定との相関、2)カリキュラムマップで紐付けされている学習成果と学習目標の双方の達成度自己評価の相関について分析を行う。教育プログラムによる期待される学習成果は各学類が設定し、各授業科目の学習目標は各教員が立てたものであり、例えば問題の同定、仮説形成、問題解決に関わる批判的思考力など、それらの学生による達成度自己評価の信頼性の評価、達成度を上げるためのカリキュラム、授業内容・方法の改善は各学類、各教員にしかできない。教育プログラムの学習成果と整合する授業科目の学習目標が立てられ、その双方の達成度評価データがフィードバックされるというデザインは教育組織、教員によるアクティブな教育改善につながる。

 今年度の学習成果・学習目標の達成度自己評価の調査は、26年度計画に基づき当センターが教育企画会議FD委員会と連携して11月および3月の2回行う。11月には前期の履修科目の学習目標の達成度自己評価データの収集とともに、今年度の卒業・修了予定者を対象に就職先の内定状況を把握し、過去の履修動向、成績評定、学習成果自己評価との相関の分析を行う予定である。詳細については10月の教育企画会議にて報告を行う。高い回答率を得るため各部局のご協力をお願いしたい。

(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

 

●○●第18回カリキュラム研究会・第16回評価システム研究会合同開催のお知らせ●○●

日時:9月29日(月)14時30分~16時 場所:総合教育1号館2階大会議室

テーマ:学士課程の学習成果(Learning outcomes)のグローバルスタンダードについて考える

発表者:西山宣昭(大学教育開発・支援センター)

趣旨:現在、全学に向けて提示されている金沢大学<グローバル>スタンダード(案)は、学士課程<グローバル>スタンダードと大学院課程<グローバル>スタンダードとからなり、前者は本学の学士課程教育の学習成果としての5つの能力を明文化したものである。今後、これらの全学が共有する学習成果を各学類の専門分野の文脈で解釈した上で、各学類が定める既存の学習成果を整合させる必要がある。また共通教育の新しいカリキュラム、コア科目についての検討の指針となる。本研究会では、本学の学士課程<グローバル>スタンダードとAAC&U(The Association of American Colleges and University)が提示しているリベラル・アーツ教育の16の学習成果モデルとの対比について考察しながら、5つの能力を曖昧さなく理解することを目的とする。