【No.511】
学習成果(Learning Outcomes)とその達成度評価基準

●○●学習成果(Learning Outcomes)とその達成度評価基準●○●

 本学では、卒業時までに獲得されるべき知識・能力を学類ごとに学習成果として明文化している。今後、共通教育の学習成果の明文化を経て明確になる本学の学士課程の学習成果は、グローバル・スタンダードとなりうるものでなければならない。こうして明確にされる学習成果は、教員にとっては、既存のカリキュラムや授業科目の内容・方法の検証や見直し、新規のカリキュラム、授業科目の設計の指針として活用されるものである。

センターニュースNo.507(7月7日号)では、学習成果としての知識や能力の定義を具体性を持って明確にすることによって、その表現は学習成果の達成度評価基準と等価になることをAAC&U(The Association of American Colleges and University)が提示しているリベラル・アーツ教育の16の学習成果モデル[1](Inquiry and Analysis, Critical Thinking, Creative Thinking, Written Communication, Oral Communication, Reading, Quantitative Literacy, Information Literacy, Teamwork, Problem Solving, Civic Engagement, Intercultural Knowledge and Competence, Ethical Reasoning, Foundations and Skills for Lifelong Learning, Global Learning, Integrative Learning)を紹介することにより示した。AAC&U による16の学習成果は、それぞれ複数の達成度評価観点に分解され、達成度評価観点ごとの4つの達成度評価尺度(秀:4、優:3、良:2、可:1)に対応する達成度評価基準が明文化されている。評価観点と評価尺度の行列の要素が評価基準であり、この行列はVALUE(valid assessment of learning in undergraduate education) RUBRICSと呼ばれている。以下に16の学習成果のうちCreative ThinkingとGlobal learningについて、学習成果の定義と各評価観点の秀(4)に対応する評価基準を例示する。

【Creative Thinking】

定義:Creative Thinkingとは、既存のアイデア、イメージ、専門知識を独創的な方法で結合あるいは統合する能力と、高度の革新性、多様な思考、リスク負担によって特徴づけられる創造的方法を用いて思考し、応答し、行動した経験を持つこと、その両方を指す。

6つの評価観点と秀(4)の評価基準:

Acquiring Competencies:(このステップは特定の領域内での方針立案とスキル獲得を指している。)内省:対象とする領域に適した評価基準を用いて創造的プロセスと成果を評価している。

Taking Risks(ここで言うリスクとは、個性に由来するリスク(困惑するかもしれない、あるいは拒絶されるかもしれないという不安)あるいは、課題に関わるあらかじめ設定された範囲を超えること、新規の素材や形式を導入すること、見解が分かれる論点に取り組むこと、なじみのないアイデアや解を提示することなど、与えられた課題を解決することに失敗するリスクを含む。):与えられた課題の最終的な解決に向けて、今までに試みられていない潜在的なリスクを含んだ方向性やアプローチを積極的に探しだしやり抜いている。

Solving Problem:問題を解決するための論理的で整合のとれた計画を立案するばかりでなく、解を実行した結果を予見し、また解の選択の根拠を明確に述べることができる。

Embracing Contradictions:異なる視点やアイデア、代替可能な視点やアイデア、相反する視点やアイデアを十分に統合している。

Innovative Thinking((アイデア、主張、問い、形式の)新規性あるいは独自性):新規または独自性のあるアイデア、問い、形式、あるいは成果を発展させ、新しい知識あるいは領域を横断する知識を生み出している。

Connecting, Synthesizing, Transforming:アイデアあるいは解を全く新しい形式に変換している。

【Global learning】

定義:Global learningとは、複雑かつ相互作用する(自然、物理、社会、文化、経済、政策などに関する)グローバルなシステム自体、またそれらが人々の生活や地球の持続可能性に及ぼす影響の予見について、批判的に分析し実際に関わることである。Global learningを通して、学生は、1)幅広い差異にまたがる多様性に配慮できる見識、公平さ、責任を持った人格に成長し、2)自分の行動がローカルおよびグローバルなコミュニティにどのような影響を及ぼすかを理解しようと努力し、3)世界の差し迫った解決すべき課題に協調的かつ公平に取り組もうとするようになる。

6つの評価観点と秀(4)の評価基準:

Global Self-Awareness:グローバル化の状況における自己の立ち位置を明確にすることによって効果的に自然界や人間社会における重要な課題に取組む。

Perspective Taking:複数の競合する(文化、学問、倫理の)観点から、自然及び人間社会のシステム内の複雑な対象の多様な捉え方を評価し適用している。

Culture Diversity:複数の世界観、経験、力関係について深く理解した上で、重要なグローバル課題に取り組むために別の文化との意味のある接触を行おうとしている。

Personal and Social Responsibility:グローバルなシステムにおける倫理、人間社会、自然環境に関わる課題に取組み、個人および集団による介入が局所およびより広い範囲に及ぼす影響を評価する上で、見識と責任を持って行動している。

Understanding Global Systems:グローバルなシステムに対して人間の組織化と行動とが及ぼしてきた歴史的及び現代での役割と多様な影響についての深い知識を活用することにより、自然界及び人間社会における複雑な問題を解決するための見識ある適切な行動を策定し提示できる。

Applying Knowledge to Contemporary Global Contexts:複雑なグローバル課題に単独あるいは他者とともに学際的な観点から取り組む上で、知識とスキルを用いて洗練された適切かつ有効な解を実行している。

以上、学習成果とその達成度評価基準を明確かつ具体的に設定した優れた大学の事例に基づき、大学の類型、ミッション、規模によらない学士課程の本質的なコアの学習成果のモデルとしてAAC&Uが策定した例を紹介した。本学が設定する学習成果とこのモデルとの対応関係を確認してみることは意味があると思われる。

(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)