【No.509】
アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その4):学生フォーラム〜学生の提案する理想的な学び

○●○ アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その4):学生フォーラム〜学生の提案する理想的な学び ○●○

中央教育審議会「質的転換」答申、教育再生実行会議第三次答申などにも見られるように、大学教育の質的転換が強く求められている背景には、今後の予測困難な社会変化・知識社会に応じられる学習成果への注目があり、すべての学校教育段階と地域・企業などのステークホルダーに意識転換が必要である。アクティブ・ラーニング型の講義法の導入だけが質的転換を象徴するものではなく、教育と学習がどこまで進んでいるかの教師と学習者の相互の省察的な経験が、学習成果を具現化し大学教育の内部質保証をかたちづくる。

アクティブ・ラーニングとは、学生参加、PBL、協調・協同学習を含む、能動的活動を促す講義法の総称として用いられる語である、と定義される。能動性を重視した経験学習あるいは他者との協働による活動、ワークショップの源流をたどると、ジョン・デューイに行き当たる。「民主主義と学校」の中で、熟慮(リフレクション)あるいは、熟慮的な(リフレクティブ)経験という語として現れている。ごく最近では、能動的学習活動の時間と質を最大化する試みとしての反転学習(flipped learning)・反転授業(flipped classroom)への注目が高まっているが、クラスルームを知識伝達の場としてだけでなく、学習経験の省察の場づくりを含めているところに経験学習から続く水路を見出すことができよう。

大学教育開発・支援センターでは、共同で新規科目「アクティブラーニング入門」を開設し、LMS(学習管理システム)を通じた事前課題・ショートビデオの提示、クリッカー(リモコン式意見集約装置)による事前課題の確認や双方向授業、協調学習やプロジェクト活動などの多様な学習方法を取り入れた試行授業を行った。シラバスに示した授業回と、対応する能動学習は次の通りである。

(週)  (テーマ) (アクティブ・ラーニングの方法)
・3  ティーチングとラーニング1・2 協調学習、クリッカー
~6 クローン人間について考える1~3 事前課題提示、討論、クリッカー
7~9 科学・技術と社会1~3 反転授業、協調学習、クリッカー
1011 プロジェクト学習1~2 プロジェクト学習(PBL
12 世界の大学 ヨーロッパ編 事前課題提示、討論、クリッカー
13 大学評価 事前課題提示、討論、クリッカー
14 課題探究実践 事前課題提示、プレゼンテーション
15 総合討論 プレゼンテーション

 

図1に示すのは、第2~3回での協調学習(グループ討論)とそのレポート課題のルーブリックである。科学教育と学習科学の視点から、学習者を主体(中心)にした教育・学習方法への転換が促されていることを知識として伝え、(1)大学でどのようにして学ぶのか(2)自律的・能動的な学習を通して「問う力」「考える力」を得ることができる機会と環境にはどのようなものがあるか(3)卒業後に社会参画する(実際の課題解決に応用する)ためにはどのような能力・コンピテンシーが重要と考えるか、3点に注目したグループワークと討論を行った。続く第4~9、および12~14回で、ポータル上で事前課題(スライド資料、リーディングリストなど)提示し、ミニッツ・ペーパー、クリッカー活用による学生参加型の双方向授業を行った。第10~11回での小グループによるプロジェクト学習では、「理想的な学び」の在り方について知識創出を目指し、7月25日『学生フォーラム〜学生の提案する理想の学び』(中央図書館ブックラウンジ)にて公開の成果発表・総合討論を行った。

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グループA:理想的な学びを「分野を横断し、学際的であること/自身の成長が見え、意欲を掻き立てること/自由度が高く、学ぶ内容を選択することができること」と定義し、大学・社会生活論を中心にした大学のシステム改革と学生の意識改革の両面からの提言を行った。

グループB:単位制のもとで学生の主体性が失われる現状から、学生・教員双方の意欲を高めるための座学形式の授業に対する課題を提起した(図2)。

グループC:高大の連携と初学者ゼミの充実に焦点を当てた。大学間の連携により「大学生の理想像や高校生のうちに身につけておいてもらいたい知識、技術などを話し合い、一定の共通理解をはかる」→「高校3年生を対象に生徒に、この共通理解を伝える意味も込めた出張講義」→「高校、大学それぞれの教員が一緒に話し合う勉強会」というステップでの高校から大学への切り替え、そして大学での学びが生涯にわたっての学びに接続するように、という視点を提起した。

センターニュースNo.509図2.jpg

アクティブ・ラーニングの手法を学び、問題解決のフレームを組み替える科学技術・社会論の手法を援用しながら、学生自身の言葉によって編まれた「大学教育の在り方」は、示唆に富んでいる。そして、特に15週間の中盤以降に私自身に迫ってきたことは、教師の脱中心化した領域に、学生が主体となる深い学習が生まれていく芽吹きの実感であった。

(文責 教育支援システム研究部門 杉森公一)