【No.507】
学習成果(Learning Outcomes)の共有―アメリカの事例―

●○●学習成果(Learning Outcomes)の共有―アメリカの事例―●○●

 本学は、卒業時あるいは修了時までに獲得されるべき知識・能力を学類ごとの学習成果あるいは研究科の学位授与方針として明文化し、教育組織内での教員間での共有と授業科目や研究室での活動の教育目標への反映が行われている。グローバル化に対応できる人材育成を目的として、本学をはじめ国内外を問わず学生の大学間流動を加速させる取組が行われており、このような状況においては、自大学の学習成果をできる限り具体的に発信するとともに、国内外の大学との間で相互に各大学の学習成果の対応関係を明確にし共有することが重要であろう。アメリカでは、学士課程における一般教育(共通教育)および各専門分野の教育プログラムが共有可能な学習成果のモデルが浸透し、各大学・大学内教育組織の教育内容に即した学習成果の策定に活用されている。注目すべき点は、長年にわたる改善により具体的な学習成果の表現になっていること、その結果、その学習成果の定義は、教員・学生双方に対して授業科目および教育プログラムの達成度評価基準(成績評価基準あるいはルーブリック)として機能しうる具体性を持っていることである。また、すでにセンターニュースNo.334(センターHPに掲載中)で紹介しているが、アルバーノ・カレッジでは、各授業科目が特定の学習成果の達成に寄与している証拠として、単位認定のための評価方法が例示されている。以下に、アルバーノ・カレッジの事例の概要を再度述べるとともに、成績評価基準としても機能する学習成果のモデルを紹介する。

AAC&U(The Association of American Colleges and University)は、学士課程のリベラル・アーツ教育の学習成果のモデルとして16の学習成果(Inquiry and analysis, Critical thinking, Written communication,Oral communication,Reading, Quantitative literacy, Information literacy, Teamwork, Problem solving, Civic knowledge and engagement—local and global, Intercultural knowledge and competence, Ethical reasoning, Foundations and skills for lifelong learning, Global learning, Integrative and applied learning)を提示し、各学習成果について、その定義とその達成度評価基準(成績評価基準、ルーブリック)を例示している[1]。例えば、Problem solvingに対しては、その定義を「問題解決とは、多様な解があり得る問題に応える、あるいは求められる目標を達成するための方策を設計し、評価し、実行するプロセスである。」とし、この定義に沿って5つの達成度評価項目を設定している。以下は卒業研究に相当するcapstoneにおいて達成されるべきパフォーマンスを明文化している。

・Define problemすべての関連する文脈上の要因を根拠として用いた明確かつ洞察に富んだ問題の明文化を行う能力を示すことができる。

・Identify strategies特定の文脈を伴う問題を解決するために多様な方策を同定することができる。

・Propose Solutions/Hypothesis問題について深く理解していることを示す一つあるいは複数の解/仮説を提案できる。解/仮説は、問題の文脈上の要因についてばかりでなく、問題の倫理的、論理的、文化的側面についても考慮されている。

・Evaluate Potential Solutions 解の妥当性に関する評価は、深くかつ洗練されたもので(例えば、網羅的かつ洞察に富んだ説明を含んでいる)、問題の歴史的背景を考慮し、問題に対する解の導出つまり論証を評価し、解の実現可能性および影響の大きさについて検討している。

・Implement Solution問題の文脈上の複数の要因について網羅的かつ深く配慮しながら解(解決策)を実行に移すことができる。

・Evaluate Outcomesさらなる問題解決の必要性の有無について網羅的かつ深く検討することも踏まえて、規定された問題の解決の結果について評価することができる。

 アルバーノ・カレッジでは、全学共通の8つの学習成果「コミュニケーション」、「分析」、「問題解決」、「価値判断」、「対人能力」、「グローバルな視野」、「効果的な社会参加」、「美的感受性」が設定され、各学習成果について学生向けの説明がなされ、同時に教員による成績評価のための評価基準として6段階の定義が定められている[2]。例えば、「問題解決」については、学生に対して「問題解決能力は、あなたが、問題を定義し、情報等を統合して問題解決のための意思決定を行い、解決策を推奨あるいは実行することを助けるものである。あなたは、独りであるいはグループで取り組む時に何が間違っていることかを判断し、その判断を定着させる能力が身についたことを証拠をもって示さなければならない。」とし、また成績評価基準(例としてレベル2)は「問題へのアプローチで、学問分野の問題解決プロセスの個々の要素を実際に使ってみることができる」と設定され、この評価基準に達成しているかどうかを測定する評価方法(試験問題)の例が「ミクロ文化と自民族中心主義に関して堅固な推論をするために、観察から十分な証拠を提示しなさい。」と示されている。学習成果の達成の根拠として、試験問題例を活用している。

 タフツ大学のアーツ・サイエンス学部では、学部に属するすべての専門分野が共有しうる8つの学習成果の例が提示され、各専門分野はこの学習成果を参照して分野固有の学習成果を設定している[3]

 以上の事例において、学習成果の具体化による成績評価基準の設定および学習成果の達成の根拠として具体的な試験問題例を活用するなどが参考になると思われる。

(文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

[3]http://as.tufts.edu/academics/assessment/index.htm

 

○●○第15回評価システム研究会のご案内○●○

日時:7月10日(木)16時30分~18時会場:総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「学習成果達成度をいかに測定するか」

発表者:西山宣昭(大学教育開発・支援センター)

概要:今年度行う学習成果達成度等自己評価アンケートの設問およびデータ分析の方針について、京都大学高等教育研究開発推進センターによる学生の学習実態の経年変化の調査等の先進的事例の検討や卒業研究の評価、外部試験の有効性の検討なども行い、議論したい。