【No.505】
アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その3):主体的な学習とは

○●○ アクティブラーニング(能動学習)からディープラーニング(深い学習)へ(その3):主体的な学習とは ○●○

大学教育において、学生の主体的な学習は自明のものと思われてきた。かつては大学進学それ自体が、高い学習動機づけに直結し、あるいは自律的な人間形成をなす職業観・キャリア観を保つファクターであったはずである。大学教員は、自分自身の学生時代の経験に照らし合わせて、学生の「主体性」に関して無自覚であり思考停止に陥っているのではないだろうか。

センターニュースでも、いくつかの調査結果について紹介してきた[1]が、学生の進路選択時における非主体性とそれに対応するためのカリキュラム開発の状況についての取組みが進んでいる。ここで、全国大学生協連合会による「第49回学生生活実態調査」概要[2]、国立教育政策研究所による「大学生の学習状況に関する調査」概要が報告[3]されているので、一部を紹介する。

まず、全国大学生協連合会の調査(2013年10~11月、学部学生8,930(回収率28.8%))によれば、予習・復習などの勉強時間は1日50.2分(授業時間を含め前年より15.3分増)、読書時間は26分台にまで減少(1日の読書時間「0」は初めて4割を超えた)となっており、大学授業に関連する学習時間の微増は見られるものの読書離れが顕著になっている。読書については、電子書籍を含んでいる。

 次に、国立教育政策研究所の調査(2013年12 月〜2014年1月、学部学生1,649 (有効回答率68.7%))によれば、【問5 あなた自身は、授業に対してどのように取り組んでいますか】に対し「興味がわかない授業であってもきちんと出席する」「なるべく良い成績をとるようにしている」に該当する回答が8割を越えており真面目な学生の姿を反映する反面、【問10 入学後に次のようなことを感じたり思ったりしたことがどのくらいありますか】に対し「授業の内容についていけてない」「専門分野が本当に自分に合っているのかよくわからない」という回答が4〜5割と高く、筆者の推測では入学後の学習へのミスマッチや戸惑いが動機付けに負の影響を与えていると考える。問5・問10についての他の特徴的な回答は、図に整理した(グラフ化は筆者による)。

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 学ぶことへの動機付けには、外発的動機付け=報酬指向と内発的動機付け=充実指向の要因で整理されるが、興味が乏しいと思われる授業であっても動機付けを維持しようとする姿勢は、どちらの指向から来ているのであろうか。

学習者はそれぞれのニーズに応じた学び方を持っている(Independent Leaning、自律的な学習)という考え方があるが、非学生中心型の講義、学生中心であるPBLを含むアクティブ・ラーニングは、双方ともに「自分で行わない」学習方法であり、自律的な学習ではない(岩田健太郎「主体性は教えられるか」筑摩書房、2012年、p.106)。主体的な学習/学生を論じる時に忘れてしまう観点は、『主体性』『アクティブ』と命名した時点で、それが主体性と能動性を失った「型」に陥ってしまう点である。特定の教育学習手法を採用する/事例を応用するにあたっては、命名付けを越えた先にある教育哲学の深化が真に問われる点であろう。

(文責 教育支援システム研究部門 杉森公一)

○●○ 大学間連携共同教育推進事業「学都いしかわ・課題解決型グローカル人材育成システムの構築」FD・SD研修会「地域で学ぶ、地域と学ぶ」第5回のお知らせ  ○●○

日時:7月5日(土)10:00~16:00  会場:金沢星稜大学 本館4階 大会議室

対象:高等教育機関教職員 及び 関心のある方  参加費:無料  定員:50名

テーマ:「地域で学ぶ」の評価にむけて~ルーブリックへの基礎的理解とその実践~

講師:杉森公一(大学教育開発・支援センター)

概要:学習達成度を判断・評価する基準を示すツールとして「ルーブリック」が注目されている。今回の研修会では、ルーブリックについての基礎的な理解を深め、実際にルーブリックを使っての評価を体験する。その後、学生評価のためのルーブリック作成を、個人授業の学習目標のふりかえりと合わせて行い、実用レベルへの引き上げを目指す。

申込:氏名、所属、電話番号、メールアドレスを記載の上、melmaga@ucon-i.jp まで

締切:平成26年6月27日(金)※参加人数把握のため、事前申込にご協力下さい。

○●○ 第15回評価システム研究会のご案内 ○●○

日時:7月10日(木)16時30分~18時  会場:総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「学習成果達成度をいかに測定するか」

発表者:西山宣昭(大学教育開発・支援センター)

概要:今年度行う学習成果達成度等自己評価アンケートの設問およびデータ分析の方針について、京都大学高等教育研究開発推進センターによる学生の学習実態の経年変化の調査等の先進的事例の検討や卒業研究の評価、外部試験の有効性の検討なども行い、議論したい。



[1]例えば451号:ベネッセ教育研究開発センター「第2回大学生の学習・生活実態調査」 http://benesse.jp/berd/center/open/report/daigaku_jittai/2012/hon/
487号:ベネッセ教育総研・日本高等教育開発協会「大学生の主体的な学習を促すカリキュラムに関する調査」

[2]全国大学生活協同組合連合会第49回学生生活実態調査の概要報告http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html

[3]国立教育政策研究所高等教育部 http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/gakushu-jittai_2014.pdf