【No.504】
既卒生および企業向けアンケートにおける社会人基礎力について

○●○既卒生および企業向けアンケートにおける社会人基礎力について○●○

 前号「根拠に基づいた教育改善」において、年度計画に基づき昨年度実施した学習成果等達成度自己評価アンケート(在学生向け)により、履修科目のシラバスに記載された学習目標(成績評価基準)達成度自己評価(4段階)、所属学類あるいは研究科が定める学習成果あるいはディプロマ・ポリシーの達成度自己評価(4段階)のデータを収集し、その結果データ等を今後分析する予定であると述べられていた。

昨年度末には、同様に、既卒生(平成24年3月卒業生)に対する学習成果の達成度に関するアンケート」(以下、既卒生アンケート)、「卒業生・修了生の就職先企業等に対する学生及び大学評価アンケート」(以下、企業向けアンケート)も実施されていた。こちらのアンケートも中期計画〔13-1〕「卒業時における学力の達成度を評価し,在学生の学力向上にフィードバックさせるシステムの運用を開始する。」実現のための年度計画に基づくものであり、平成26年度計画としては、「大学教育開発・支援センターは,卒業時における学力を評価するために,平成25年度に収集した平均GPA,学習成果達成度自己評価,学習目標達成度自己評価,既卒者アンケート,企業アンケートの各種データの分析を行う。大学教育開発・支援センターは,平均GPA,学習成果達成度自己評価,学習目標達成度自己評価,既卒者アンケート,企業アンケートの各種データの収集を行う。」とされている。

両アンケートの概要としては、既卒生アンケートでは、学域・学類生は、2011年度卒業者数1482名、アンケート送付数1467名、回答259名、回答率18%、修士・博士前期および博士・博士後期修了生は、2008年度修了者数804名、アンケート送付数748名、回答148名、回答率20%、2010年度修了者数793名、アンケート送付数717名、回答102名、回答率14%となっている。企業向けアンケートは181社から回答があった。細かな分析は、在学生向けアンケート同様、今後進めていくこととなるが、本稿では両アンケートに共通する社会人基礎力(12項目)が身についたかどうかについて簡単に報告させていただく。

 

「社会人基礎力(12項目)」

(1) 主体性(物事に進んで取り組む力)

(2) 働きかけ力(他人に働きかけ巻き込む力)

(3) 実行力(目的を設定し確実に行動する力)

(4) 課題発見力(現状を分析し目的や課題を明らかにする力)

(5) 計画力(課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力)

(6) 創造力(新しい価値を生み出す力)

(7) 発信力(自分の意見をわかりやすく伝える力)

(8) 傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力)

(9) 柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力)

(10) 情況把握力(自分と周囲の人々と物事との関係性を理解する力)

(11) 規律性(社会のルールや人との約束を守る力)

(12) ストレスコントロール力(ストレスの発生源に対応する力)

 

既卒生アンケートでは、(1)主体性、(8)傾聴力、(9)柔軟性、(10)情況把握力、(11)規律性については、「十分に達成している」、「ある程度達成している」の合計が回答の80%以上となっており、在学中の学習成果への高い評価が示されている。一方で、(2)働きかけ力、(6)創造力については、「あまり達成していない」、「まったく達成していない」が40%以上と課題が残されていることがわかる。

企業向けアンケートでも同様に、(1)主体性、(8)傾聴力、(10)状況把握力、(11)規律性では、70%以上の企業から「十分身につけている」または「ある程度身につけている」と肯定的な評価がある一方で、(2)働きかけ力、(6)創造力では60%以下となっている。また、大学院修了生に対する学習成果の達成度に関するアンケート調査でも同様の傾向となっており、(2)働きかけ力、(6)創造力育成が課題であることが明らかになった。

いみじくも、(1)主体性、(8)傾聴力、(9)柔軟性、(10)情況把握力、(11)規律性への高い評価は、まじめにこつこつと課題をこなすイメージがある金大生像と見事に重なる結果となっている。今後は、これらの美点を活かしながら、(2) 働きかけ力、(3) 実行力、(4) 課題発見力、(5) 計画力、(6) 創造力、(7) 発信力についても高い評価となるようにアクティブラーニングを積極的展開することも必要と思われる。また、(12)のストレスコントロール力については、授業で身につけさせられることが可能なのか、正課、課外の両方を通して育成すべきものなのかを含めて検討が求められるのではないだろうか。

 もちろん、社会人基礎力は経済産業省が設定したものであり、大学教育現場としては、このような外部指標を伸ばすことだけを目指して教育を行っているのでは無いことは十分承知している。しかしながら、社会人基礎力は企業が学生に求めている能力指標となっている現実もある。今回のアンケート結果だけで何をどう変えるのかは判断出来ないかもしれないが、在学生アンケート結果、授業評価アンケート、GPAなどのデータと結びつけながら、社会が求める能力を学生に身につけさせるため、データに基づく恒常的な教育改善活動を大学として続けていかなければならないのではないだろうか。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)

 

○●○第15回評価システム研究会のご案内○●○

日時:7月10日(木)16時30分~18時  会場:総合教育1号館2階大会議室

テーマ:「学習成果達成度をいかに測定するか」

発表者:西山宣昭(大学教育開発・支援センター)

概要:今年度行う学習成果達成度等自己評価アンケートの設問およびデータ分析の方針について、京都大学高等教育研究開発推進センターによる学生の学習実態の経年変化の調査等の先進的事例の検討や卒業研究の評価、外部試験の有効性の検討なども行い、議論したい。