【No.495】
教育実践報告会「能動的学習と学習成果」参加報告

●○●教育実践報告会「能動的学習と学習成果」参加報告●○●

3月18日(火)、昨年度に引き続き、教育企画会議教育改革部会主催(教育企画会議FD委員会、大学教育開発・支援センター共催)で教育実践報告会「能動的学習と学習成果」が開催された。3学類から能動的学習(アクティブ・ラーニング)主体の授業実践の報告が行われ、また、同志社大学PBL推進支援センター長の山田和人氏から、初年次のPBL(Problem-based Learning)授業とそれに関わる高年次学生および大学院生によるSA(スチューデント・アシスタント)・TA(ティーチング・アシスタント)活動というアクティブ・ラーニングに関する講演が行われた。当日の講演、3学類からの報告、全体討論の様子は、ビデオ撮影され、現在、アカンサス・ポータル内にて学内限定で閲覧できる[1]。参加いただけなかった方は、是非ご覧いただきたい。以下に3学類の報告の概要を紹介する。

学校教育学類の村井淳志先生からは、2年前期開講の100名の受講生を対象とする「初等社会科教育法」が紹介された。教育現場で即戦力として求められる授業プラン作成について講義するものである。授業プランとして求められるのはストーリー性と意外性であることを強調され、これらを優れた授業プランの事例を示すことによって学生に実感させようとする取組である。学生に問いを発し考えさせることによって、例示しようとする授業プランのストーリーの全体像に導く手法であり、大人数での講義においてもいかに問いを設計するかが学生の能動性を促す最も重要なポイントであることを示された。ストーリーの組み立ては、文献調査や聞き取り等のresearchに基づくものであり、得られた結果である事実としての授業のストーリーは教員を目指す学生を揺さぶる意外性に富むものである。初中等教育での授業プランもまた、研究成果そのものであるべきとの主張であろう。分野を問わず、研究によって明らかにされる現象等の背後にあるメカニズムはストーリー性と意外性を持っている。村井先生の授業内容の詳細については、京都大学高等教育研究開発推進センターのコースポートフォリオに登録されており、閲覧することができる[2]

 経済学類の佐藤秀樹先生からは、1年前期の共通教育導入科目「初学者ゼミ」の実践が紹介された。経済学類では、「初学者ゼミ」の開設以前から、研究室での高年次のゼミ、特別研究、卒業研究との接続を意図した1年次少人数ゼミナールを開設していたが、初学者ゼミへの移行後も1年次の少人数ゼミを大学教育の始点として重視し、初学者ゼミのための学類オリジナルのガイドブックの作成、学類FDでの教育法の研究などに組織として取り組んでいる。佐藤先生ご自身の実践において、ミクロ経済学・マクロ経済学の基礎を扱うテキストを輪読形式で読み込むとともに、3~4名のグループ単位で論点についての見解をまとめた上で、クラス全体での議論を行う授業形態について詳細に説明いただいた。グループ活動による相乗的な学習効果、テキストの内容と関係づけることができる最新の新聞記事の選択を学生に行わせる、学生の自律性やグループ活動の創発性を促すために教員のコメントは必要最小限に留めるなど、初年次の少人数ゼミにおける学習成果や教育方法の工夫等の客観的な分析について言及された。このような知見は、専門分野を問わず広く少人数ゼミナールの授業の設計に活用できるものである。

 機械工学類の米山猛先生からは、3年前期開講の「創造デザイン実習」について紹介された。アクティブ・ラーニングとしての最も早期の取組として知られる工学系のProject-based Learningに分類されるもので、具体的な説明により、その理由がよく理解できた。大手の機械メーカーでは、機械のアイデア創出、設計、製作、動作検証の分業化が進み、これらのプロセスすべてに関わることは難しい。イノベーションのためにはすべてのプロセスに熟知することが不可欠であるとともに、この機械工学のストーリー性をカリキュラムとして具体化することが学生の能動性を促す最善の方策である。本学機械工学類では、2年前期の「機械解剖実習」、3年前期の「創造デザイン実習」、3年後期の「機械工学ゼミナール」と各年次の学生実験および講義科目とを密に連携させて、上記のプロセスを体験的に学習させ、卒業研究に結び付けている。3年後期の「機械工学ゼミナール」では、機械の目的自体も考えさせる(問いを見出す)課題探求能力の養成を意図したものだが、「創造デザイン実習」はその前段階として、例えば「ポールを登る自走マシン」というテーマを与えて(問いを発して)、各グループでアイデアをまとめ、設計し製作し、動作検証を行った上で、発表会・展示会を行うことにより、課題解決能力やコミュニケーション能力を養成する。グループでアイデアを練る段階で書かれた手書きの設計図を紹介いただいたが、機械音痴の筆者にも学生が身を乗り出して考える様子が目に浮かぶようであった。  (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)



[1]アカンサス・ポータルのトップページの【時間割】【その他情報】の欄の最下部に【平成25年度教育実践報告会「能動的学習と学習成果」】というコースがありますので、ここをクリックすると閲覧できます。



[2]大学教育開発・支援センターHPトップページの画面上【リンク集】→【京都大学高等教育研究開発推進センター】→(画面右下)【MOST】→(画面右)【MOST GALAXY】の欄の【第1期MOSTフェロー】→(画面中央下)【教育現場で即戦力となれる、社会科教師を養成するための「初等社会科教育法」村井淳志先生(金沢大学)】で閲覧できます。

 

●○●新着書籍のお知らせ●○●

大学教育開発・支援センターに、全国の大学や大学教育センター等から各種報告書が届いております。また高等教育関連図書を購入しています。報告書、図書、資料等は、センター図書室(総合教育1号館6階613号室。センター共同研究室向かい)に所蔵しております。ご関心のあるもの、参照したいものがございましたら、お貸しすることができますので、ご連絡いただければ幸いです。以下は新着書籍です。

・「FDガイドブック 大学教員の能力開発」(高等教育シリーズ)玉川出版部(2014年2月)

 ケイJ.ガレスピー、ダグラスL.ロバートソン(編著)、羽田貴史(監訳)、

 今野文子、串本剛、立石慎治、杉本和弘、佐藤万知(訳)

・「大学教員のためのルーブリック評価入門」(高等教育シリーズ)玉川出版部(2014年3月)

ダネル・ステチィーブンス、アントニア・レビ(著)、佐藤浩章(監訳)、井上敏憲、俣野秀典(訳)

・「高等教育における視学委員制度の研究 認証評価制度のルーツを探る」東信堂(2014年3月)

 林 透(著)