【No.491】
九州大学基幹教育院訪問調査報告

○●○九州大学基幹教育院訪問調査報告○●○

 3月13日(木)に、九州大学の教養教育の仕組みを調べるため、九州大学基幹教育院への訪問調査を行った。谷口説男氏(基幹教育院 副院長)、田中岳氏(基幹教育院 教育企画開発部准教授)から詳しく話を聞くことができた。九州大学ではいわゆる教養教育を全学教育と呼んでいるが、その運営組織が基幹教育院である。基幹教育院は、教養教育改革の一環として、教育担当副学長・理事を院長とする組織として平成23年10月に設置され[1]、教育企画開発部、教育実践部、特別プログラム推進部、入学者選抜方法開発部、学修・健康支援開発部、基幹教育支援技術室から構成されている。専任教員は約60名とのことであった。「基幹教育」とは、図1に示すように、専門教育を学ぶ前に、学生にさまざまな可能な選択肢と出会う学びの機会を創り、一人一人が自分の判断で、自分が依拠しようとする枠組みを選択できるように、幅広い知識や視野を育成すると同時に、生涯に渡って自律的に学び続けるアクティブ・ラーナーとしての「学び方を学ぶ」「考え方を学ぶ」ための姿勢と態度(基幹)を育成する営みである[2]

 基幹教育院では一般的な教養的科目に加えて、基幹教育セミナー、課題協学科目を企画・担当している。これらは、いわゆる導入科目にあたり、全学生必修で、アクティブ・ラーナーとしての「学び方を学ぶ」「考え方を学ぶ」ためのスタート科目である。両科目とも必修科目であり、基幹教育セミナーは、前期週一コマ1単位科目、全学部からの学生をシャッフルした二十数名のいわゆる初年次ゼミ科目である。課題協学科目は、前期、後期それぞれ週2コマ、2.5単位×2の5単位科目で、グループ学習およびPBLを活用した科目である。担当教員は文系、理系問わず、異なる学部担当の教員3名(うち1名は基幹教育院教員)が、一クラス50名のクラス3つに対して、それぞれ8回ずつ担当するものである。これら2つの科目をきっかけとして、図1で示した大学での学びの基幹となる部分を身につけさせることを目指している。

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 また、九州大学では学部毎に定めた教育研究上の目的に加えて、全学教育に関して一般的目標、授業科目毎の目標が明示されている[3]。科目区分が異なるため単純に比較はできないが、これらは、金沢大学において共通教育科目について記述されているものとそれほど異なるものではない[4]。強いて違いを指摘するなら、高年次教養科目への言及が見られるくらいである。しかし、アクテイブ・ラーナー育成という目標、PBL活用科目必修、図1に示されている専門科目との関係を考えるとその意味するところは、大きく異なる可能性はある。金沢大学でも共通教育改革WGが始動しているが、共通教育科目と専門科目の関係を確認した上で、共通教育全体および科目区分毎の学習目標、学習成果を検討することが、金沢大学学士課程教育における学生の達成度向上につながるのではないだろうか。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)

九州大学の全学教育の目標

(一般的目標)

1

高校教育との接続を円滑にし,大学教育への適応を促進する。

2

社会の変化と学問の進展に対応しうる感性と能力を育成する。

3

学問への理解を深めるとともに,関心の幅を広げ,大学における学習の意欲を高め,自ら学び取る能力を養う。

4

大学院においてあるいは社会において継続的に学習を進める上で,基礎となる能力を培う。

5

国際社会の一員としての自覚の醸成とその基礎となる能力を養う。

(授業科目ごとの目標:教養教育科目)

6

教養教育科目は,良誠を備えた人格の陶冶を主眼に,指導的立場に立つべき市民としての素養を育成することを目標とする。具体的には,自ら問題を発見し,あるいは提起される問題に対して的確かつ総合的な判断を行うことができる能力,そしてその判断を支える関心と知識の幅の広さ,社会と学問の変化に対応できる能力及び自立して不断に学ぶ能力を育成することを目標とする。

7

共通コア科目は,文化や社会,自然の中にある人間存在の成り立ちを基本から考察し,人間の尊厳や自由の価値についての理解を深め,現下の社会的・国際的課題への関心を養い,学問の有する可能性や社会的意味について考えることを通じて,爾後の市民的生活のために必要となる基盤を形成させることを目標とする。

8

コアセミナーは,高校とは異なる大学における学習への適応を促進し学習意欲を向上させること,及び「読む,書く,調べる,発表する,討論する」等の学問を進めていく上での基礎的な能力を育成することを目標とする。

9

文系コア科目,理系コア科目,総合科目は,各分野の知識や見解がいかなる問題意識から形成されその形成にどのような方法やものの見方が働いているかという学問のコアを理解させるとともにテーマの探究を通して学問の面白さを理解させることを目標とする。

10

少人数セミナーは,大学における学習への適応を促進し,学習意欲を向上させ,人間的な交流の場をつくることによって優れた人格形成に資することを目標とする。

11

高年次教養科目は,さまざまな分野の専門研究者の教育能力を総合的に生かすことによって,質の高い教養教育を実施し,それによって優れた人材を育成する事を目標とする。

12

言語文化科目は,国際社会を積極的に生きるために必要な,また,専門分野を学習するために必要な外国語運用能力を涵養・向上させ,グローバルな異文化理解と豊かな国際的感覚,国際的教養を育むことを目標とする。

13

健康・スポーツ科学科目は,精神的及び肉体的に健やかな人間性を有する人材の育成を目標とする。具体的には,生涯を通した健康・体力をつくりだすための健康科学に関する知識の修得及びその実践能力の獲得,並びに身体を介したコミュニケーション能力の向上を目標とする。

(授業科目ごとの目標:文系基礎科目)

14

文系基礎科目は,現代社会の歴史的認識と人文社会科学の諸科目の教授を通して,文系の学問を学ぶための基礎的な知識や方法を修得させることを目標とする。

(授業科目ごとの目標:理系基礎科目)

15

理系基礎科目は,諸科学を通して理系の共通基盤となる自然科学の基礎的な知識や方法を修得させることを目標とする。

(授業科目ごとの目標:情報処理科目)

16

情報処理科目は,情報社会を積極的に生きるために必要な,また,専門分野を学ぶために必要な情報処理の基礎的技術を修得させ,情報活用能力を育成することを目標とする。

 



[1]設置の趣旨、経緯については、『大学マネジメント』2012年10月号特集記事「アクティブラーナーを育成する「基幹教育院」の新設」、pp.2-10に詳しく述べられている。