【No.489】
アクティブ・ラーニングとティーチング・アシスタントの活用

○●○アクティブ・ラーニングとティーチング・アシスタントの活用○●○

 本学角間キャンパスで最も多くの学生が利用する角間中央バス停には、人工の水辺がある。全部で104段ある大階段の最初の踊り場の人工池が私は好きだ。水面に映る石垣は時に人の顔のようにも見えるが、風が吹けばさざ波にかき消される。ここに立てば、これからの季節、いろんな鳥たちのさえずりを聴くことができる。里山キャンパスならではの多様性ある空間である。

 そんなキャンパスで、この春も、新しい多様な学生を迎えての多様な授業が始まる。今年はどんな学生に出会えることか、期待をしながらの授業設計の一ヶ月である。

さて、今一度、アクティブ・ラーニングについて考えてみたい。それはどんな効果を学生にもたらすのだろうか。例えば、我妻優美・中原淳「大学生の学習観変容に影響を及ぼす協調学習経験:映像作品制作を目的とした大学授業における事例研究」『日本教育工学会論文誌』35, 2011年は、高等教育における「学習者の学習観の変容に影響を与える協調学習経験の特徴を明らかにすること」を試み、「協調学習を取り入れた大学授業の単一事例を対象に質問紙調査と観察調査を行った分析」の結果、「《メタ視点に立つ経験》と概念化可能な3つの特徴的な協調学習経験が存在することが明らかになった」と報告している。アクティブ・ラーニングの効果に関する貴重な研究成果である。

私は、この論文の筆者たちがティーチング・アシスタントとして観察調査を行ったことに注目したい。「アメリカの大学に始まったティーチング・アシスタント制度は、ここ10年ほどの間に日本の大学に導入されて来ている。TA制度は大学の授業を効果的に改善する極めて有効なシステムの一つと考えられている」として、「TAによる授業支援に関する将来のモデル構築を目指し、TAが授業に与える影響や役割、そして問題点を抽出する」(尹得霞・趙晶岱・岩崎信「TAによる授業支援のモデル化への基礎研究:大学1年生向け新設科目「科学と情報」のTA実践を通して」『教育情報学研究』6、2007年)といった論文に始まり、TAに関する研究は増えている。とくに大学初年次の物理実験などで質問・演示実験・説明という授業展開の中でTAを用いると、学生の理解と興味を深める上で効果があるといった研究報告には納得がいく。さらに、我妻らの研究では、TAが学生たちのこうしたラーニングのアシスタントとなるのではなく、担当教員の眼となって学生たちの学習ぶりを観察するという授業改善研究のための助手役を務めているのである。

 大学設置基準が義務付けたFDは、授業改善のための組織的な研究である。私のような教育学の素養のない授業担当者にとっては、アクティブ・ラーニングについても、いろいろと試行錯誤しながら、授業実践を続け、それを誰かに観察・評価してもらうことでしか、意味のある研究にはならない。先日、大阪学院大学のFDで100名ほどの教員の方々に「アクティブ・ラーニングと大学教育の質保証」と題して話をさせていただいた。スマフォがクリッカー代わりになる時代である。授業内容理解度をきちんと把握しながら授業をすることが、一般的になる。グループワークをする学生たちにプレゼンを求め、その評価をスマフォで相互におこなうようにすれば、アクティブ・ラーニングの効果は一目瞭然になろう。だが、学生以外の客観的な目によって成果を評価するためには、これに加えての、TAを上記のような活用が望ましいと思われるのである。

 大前研一氏によれば「教える=teachには『答えがある』という前提がある」「最近の北欧諸国では、『teach』の概念は教育においては間違いだと考えられており、むしろ生徒が『learn』するのを助けるのが教師の役割であるという認識に変わっている」(『新版 知の衰退からいかに脱出するか』光文社、2011年)とのことである。既存の答えを教えるのが教師であった時代は終わっている。インターネットによって既存の回答にたどり着くことができる。回答を教員自身が知らない問題へのチャレンジこそが、大学教育の場で行うべきことである。

 最も優れた教材は、学生たちの頭の中にある。それをうまく引き出し、議論のテーブルに乗せて深い考察に導くのが、アクティブ・ラーニングである。隣りの学生が発言すれば、その個性に気づき、価値観の多様性に今更ながらに気づく。同じ教室にいるから体感できる。TA制度をそうした雰囲気づくりと効果確認のために活用すべきである。(文責:教育支援システム研究部門 青野 透)  

●○●「平成25年度教育実践報告会・第11回大学教育セミナー」開催のお知らせ●○●

平成25年度教育実践報告会・第11回大学教育セミナー「能動的学習と学習成果」

主催:金沢大学教育企画会議教育改革部会       

共催:金沢大学教育企画会議FD委員会、金沢大学大学教育開発・支援センター   

日時:3月18日(火)13時30分~17時   

会場:金沢大学角間キャンパス自然科学図書館棟大会議室

趣旨:金沢大学における「各学域・学類及び共通教育機構における能動的学習を促す実践事例

を全学で共有し、各部局における授業形態に応じた能動的学習を推進する」取組の一環として,

能動的学習に基づく課題探究・課題解決力等を養う学類の優れた取組みについて全学で共有す

るとともに、他大学の事例も参考としながら、学内外の参加者とともに「能動的学習」の設計

とその学習成果について議論する。     

               【プログラム】【総合司会】渡辺達雄・大学教育開発・支援センター准教授      

 13時30分~13時35分【開会挨拶】中村慎一・教育担当理事・副学長             

【講演】       13時35分~14時20分「PBL と学習支援-同志社大学プロジェクト科目におけるTA・SA協議会の試み」       山田和人・同志社大学PBL推進支援センター長         

【学内事例報告】      

14時20分~14時45分     村井淳志・学校教育学類教授   

「教育現場で即戦力となれる社会科教師を養成するための初等社会科教育法の実践-100名受講の大講義-」 

14時45分~15時10分     佐藤秀樹・経済学類准教授     

「経済学類の初学者ゼミ―具体的事例の紹介―」       

                                      15時10分~15時35分    米山猛・機械工学類教授                                 

「創造デザイン実習による課題解決能力育成」 

15時35分~15時50分     <休憩>     

15時50分~16時55分     【全体討論】 

16時55分~17時【閉会挨拶】西山宣昭・教育改革部会長・大学教育開発・支援センター長    

【参加申し込み】大学名等ご所属、ご氏名を明記の上、ml-rche-ad@ml.kanazawa-u.ac.jpへ、3月14日(金)までに、件名を「教育実践報告会参加申し込み」とし、メールにてお申込みください。