【No.484】
試される大学間組織連携の力-障害学生支援と女性研究者支援-

○●○試される大学間組織連携の力-障害学生支援と女性研究者支援-○●○

 昨年12月、内閣府「平成25年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰」にて、当センターが連携機関の一つである日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)が、内閣総理大臣表彰を受けた。理由は「聴覚障害学生の高等教育におけるバリアフリー・ユニバーサルデザイン化を目的に設立され、22大学で構成された全国ネットワークであり、モバイル型の遠隔情報システムによる授業聴講支援を行うなど、大学・関係者の間をつなぎ、それぞれが持つノウハウを共有・発信することで、現在ある聴覚障害学生支援体制の基礎を生み出し、大学の取組に対する支援及びその普及・定着に大いに貢献している」というものであった。

http://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/h25hyoushou/gaiyou.html#s1

 日本学生支援機構「平成24年度短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書」によれば、平成24年5月時点で全国1,197の高等教育機関に「聴覚障害」の学生が1,488名在籍し、うち1,005名が何らかの支援を受けている。聴覚障害の場合、受験前相談・入学前相談などを通じ、何が必要な支援であるかはおおよそ判明する。その多くは授業時における要約筆記やパソコンノートテイクによる授業情報保障である。やるべきことは分かっている。だが、上記数値が示しているように、聴覚障害学生は全国の高等教育機関に点在する状況であり、ほとんどの高等教育機関は、初めての(あるいは久しぶりの)支援取組となる。何をすべきかは分かっていても、そのノウハウや、要約筆記・ノートテイカー養成や確保が間に合わない場合がほとんどである。

 日本学生支援機構が実施した、他の調査「大学、短期大学、高等専門学校における学生支援の取組状況に関する調査(平成20年度)」http://www.jasso.go.jp/gakusei_plan/torikumi_chousa.html

(回答校1,105校)結果の分析において、以下のように指摘されている。「他大学等と協働しての学生支援に対する取組の実施率は、大学全体では15.7%となっており、実施率の最も高い国立大学でも28%にとどまっている」「他大学等と協働して実施したいと考えている学生支援の取組を尋ねたところ、ノートテイカー派遣等の「障害学生修学支援」や「学生のボランティア活動支援」、「学生相談」、「(学生支援に関する)合同セミナー」など、単独の大学等では実施困難なものについて、連携・情報交換等を実施していきたいと考えている様子がうかがえる。」

 聴覚障害学生に対して量的に質的に十分な授業情報保障をしようとすれば、ノートテイカーの相互育成・派遣などによって近隣の大学等と連携するしか方法はない。また「モバイル型の遠隔情報システムによる授業聴講支援」は、東日本大震災のおり、磯田恭子ほか「東日本大震災で被災した聴覚障害学生のための遠隔情報保障支援の実施」筑波技術大学テクノレポートVol.19 (1) Dec. 2011

http://www.tsukuba-tech.ac.jp/repo/dspace/bitstream/10460/1062/5/Tec19_1_12.pdfにあるように、全国13大学、すなわち札幌学院大学、群馬大学、早稲田大学、日本社会事業大学、フェリス女学院大学、静岡福祉大学、愛知教育大学、日本福祉大学、同志社大学、立命館大学、関西学院大学、広島大学、および愛媛大学からの協力を得て、被災地の宮城教育大学、東北福祉大学、東北生活文化大学、および宮城学院女子大学の4校の聴覚障害学生の授業情報保障に活用された。

 研修を受けた専門職員のコーディネートによって、学生が学生を支援する大学連携が実際に存在し、10年近くにわたって実績を積んできての総理大臣表彰であった。大学連携はwin-winの関係に立つのが難しいことが多いが、学生のためには連携が不可欠なのである。大学は社会の「バリアフリー・ユニバーサルデザイン」の先頭に立つことが可能であるし、そうすべきである。障害者差別解消法は障害者への合理的配慮を義務付けている。大学等が単独で、一定の技量のある支援学生を十分な人数確保できることは困難である。だからといって私の大学等ではこの支援・配慮はできませんという言い訳はできない。連携をすればできるレベルの支援をしないのは、障害者差別であるといわれても仕方がない時代になっていることを大学等の関係者は心に銘記すべきである

 さて、大学間連携が他の領域でも必要であり、可能である。1月25日、金沢歌劇座にて、本学主催の「Hokuriku Women Researchers' Networkキックオフシンポジウム」が開催された。文部科学省平成25年度科学技術人材育成費補助事業「女性研究者研究活動支援事業(拠点型)」に採択された「金沢大学で取り組んでいる女性研究者の研究活動支援で高い効果が得られた取組及び新規の取組を連携機関と協力して実施・普及させることにより,北陸地区全体の研究活動活性化に寄与する」ことを目的とする取組の本格スタートを切る催しであった。

 女性であるという理由で研究者を続けられない、そんなことがあってはならないと誰もが思っているであろう。適切な支援による問題の解決への道筋は見えている。上記の事業(拠点型)に選ばれた、本学を含む9つの拠点大学は、成功事例を他大学に伝えながら、相互の連携の力を強め、地方自治体や地域企業とも協力しながら事業を行うことになる。

キックオフシンポジウムでは、第1回「中村賞」(中村学長による金沢大学女性研究者賞)受賞者、すなわち女性研究者賞の八重澤美知子・国際機構教授、女性研究者奨励賞の柿川真紀子・環日本海域環境研究センター助教と日比野由利・医薬保健研究域医学系助教による講演も行われた。助教の方たちの講演は手堅いながらも将来性を感じさせる内容であったが、八重澤先生の講演を聴きながら、かつて城内キャンパスの旧教養部時代に留学生指導に先生から助言をいただいたことのある筆者は、先生のお人柄を反映した心理学の分かりやすい解説によって、「このような先生がおられるから、本学のグローバル化の礎は確固たるものとなっている」との思いを強くした。

 障害学生を支援し、女性研究者を支援するのは、大学等の重要課題である。課題解決に向けた方策として、他の大学等との連携を考えざるをえないことも既に明らかだと思われる。ここから、他の分野を含めた大学連携が始まることも期待したい。(文責:教育支援システム研究部門 青野 透)  

●○●第14回評価システム研究会・第17回カリキュラム研究会開催のお知らせ●○●

時:1月30日(木)16時30分~18時00分 所:角間キャンパス 総合教育1号館2階大会議室

報告者:堀井祐介(大学教育開発・支援センター)

テーマ:「TUNING、AHELO、高等教育質保証」

趣旨:10月に一橋大学が、12月に国立教育政策研究所が、主催で開催された国際シンポジウムではどちらもTUNINGがタイトルに挙げられていた。本研究会では、両シンポジウムでの説明資料を参考に、TUNINGについてその趣旨、仕組みについて確認するとともに、OECDが実施しているAHELO(高等教育における学習成果調査(Assessment of Higher Education Learning Outcomes)とTUNINGとの関係を通して国際的な高等教育の質保証の流れについて考えてみたい。