【No.479】
教養教育の再編の動向

●○●教養教育の再編の動向●○●

11月12日に開催された国立大学協会主催の平成25年度大学マネジメントセミナー【教育編】において、京都工芸繊維大学、九州大学、東北大学から現在進行中の教育改革の報告が行われた。共通するのは、学士課程から大学院に至る教養教育の拡充とアクティブ・ラーニング主体の授業科目の開発である。

京都府立大学、京都府立医科大学、京都工芸繊維大学の教養科目の3大学共同開講に向けた取組に合わせて、京都工芸繊維大学が独自に行う教養教育改革について副学長の森迫清貴氏から報告された。学部の学生定員の一部を削減、修士課程の定員とし、大学院リベラルアーツ教育を基盤とする6年一貫の修士育成教育を行おうとするものである。大学院リベラルアーツ科目の授業は、4学期制の下で7~8週で人文系教員が提示する古典を読み、また現代的課題について専門分野が異なる大学院生が議論を行う。専門教育を経て行うリベラルアーツ教育の意義が強調された。

九州大学が平成26年度から開始する基幹教育カリキュラムについて、副学長・基幹教育院長代理の若山正人氏から報告された。学士課程の初年次、高年次の基幹教育および大学院の共通教育の企画、実施主体として基幹教育院が設置された。この基幹教育院には75名の教員が所属し、旧来の教養部の約半数の教員組織であり、このうち30名程度は学内から移籍し、残りは学外から公募で採用されている。基幹教育院の教員は、原則として、大学院教育を担ういずれかの学府の専任教員となり、30%程度のエフォートを研究と大学院教育に、また70%程度のエフォートを基幹教育マネジメントと基幹教育の実施に割り当てる。ただし、基幹教育は基幹教育院の教員とともに全学の教員によって行われ、全学出動体制は維持される。

基幹教育は、自分の専門と考える分野以外の一流の研究者から「考え方」を学び、クリティカル・シンキングを促す課題解決型の授業によって、自律的に生涯を通して学び続けるアクティブ・ラーナーを育成しようとするもので、いわゆるリベラル・アーツ教育を指向しているといってよいであろう。基幹教育カリキュラムの中核に配置される高年次基幹教育科目は、新規に開発されたアクティブ・ラーニング主体の授業科目であり、基幹教育セミナーと課題協学科目とからなる。異なる興味、見方、考え方を持つ受講生からなる文理融合クラスを編成し、専門性を身につけた上での対話、協同、内省を通して上記の基幹教育を行う。基幹教育セミナーでは、1クラス20名程度で大学で学ぶ意味を語って対話し深め、対話を通した学びの成果を自分の言葉で説明する。課題協学科目では、「地球規模での炭素循環」「生命の繋がり」「学びの接続と変容:高校と大学」「歴史の接続と転換:戦前と戦後」などのテーマについて、教員による講義、データ収集・文献調査、グループ討論、成果報告・問題提起を4週で行い、計12週で3つのテーマに取り組む。1クラス150名を3つの小クラス50名に分けて、各テーマを担当する3名の教員が3つの小クラスを4週ごとにローテーションする。1週あたり2コマ連続で、第1週はオリエンテーション、最後の2週ではクラス全体の発表会が行われる。専門分野と異分野との関連性に気づき、他者との議論を通して様々な考え方を理解、お互いを高めあうことが意図されている。

基幹教育カリキュラムへの移行に際して、スポーツ・保健科目は発達障害など問題を抱える学生を見出す機会としての重要性も議論され、また第2言語科目は学生の視野を広げる教養科目としての重要性から必須科目として維持されるとのことであった。なお、2コマ連続の討論や講義と討論の連携などアクティブ・ラーニング主体の授業、また教員が海外出張や研究に没頭する期間を設けるなど全学出動体制を支える環境として4学期制について検討中とのことであった。

東北大学は、教養教育の教育内容・方法の高度化と学士課程・大学院課程9年間にわたる教養科目の開講からなる高度教養教育の実施に向けた準備を行いつつあり、その状況について総長特別補佐の山口昌弘氏から報告があった。高度教養教育の導入に向け、その主体となる高度教養教育・学生支援機構が来年4月に設置予定であり、約160名の教員組織となる。高度教養教育・学生支援機構の設置とともに、学習情報を集約、分析するIRの機能を持つセンターを設立する。このIR機能を持つセンターのメンバーを各部局の教務委員長が兼務し、部局との連携を図る。

東北大学は、平成24年度に採択されたグローバル人材育成推進事業の実施のため、グローバルラーニングセンターを設立し、グローバルリーダー育成プログラム(TGLプログラム)を策定し、今年度4月から実施している。このプログラムは、学部生を対象とする登録制教育プログラム(現在530名が登録)で、教養教育再編のパイロットプログラムとしても位置付けられており、上記の高度教養教育のカリキュラムの構成要素となる。TGLプログラムは、1か月程度の短期海外派遣プログラム(Study Abroad Program, SAP)、6か月~1年の交換留学や国際インターンシップを中心に、Problem Based Learning(PBL)型の国際共修ゼミ等の外国人留学生と日本人留学生の共修授業科目、2年次以降の全学教育科目「Practical English Skills」、専門英語授業科目等からなる。同時に、ライティング・学習支援センター新設(来年度に予定)、課外英語学習講座の実施、TOFLE-ITP無料受験の拡充(来年度から1、2年生は全員受験)、グローバル企業によるキャリアフェアの実施等、環境整備も進められている。

TGLプログラムも組み込まれる学士課程・大学院課程における高度教養教育のカリキュラム編成は今後進められるが、一つの編成方針はアクティブ・ラーニング主体の授業科目の開発・導入と考えられる。現在初年次前期に開講されている課題解決型の主体的な行動力を養成する「基礎ゼミ」(現在154クラス(テーマ)を開講)を始点として、今年度から1年次後期に展開ゼミを開設しており、来年度にはクラス数を増やす予定となっている。さらに展開ゼミと接続する専門ゼミの開発、専門科目数の見直し、大学院におけるPBL型授業科目の開発が行われつつある。

以上、3大学における教養教育の再構築の事例を紹介したが、本学においても共通教育カリキュラムの再編について検討が行われつつある。3大学の事例にもあるように、カリキュラムとともにアクティブ・ラーニング主体の授業科目を拡充あるいは開発できるかどうかが課題と考えられる。なお、本学の各部局で行われている能動的学習を促す授業科目の開発・実践の状況を全学で共有するため、昨年度に続き来年3月初旬に教育企画会議下の教育改革部会主催で教育実践報告会が予定されている。

                                                                                       (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)