【No.474】
学習成果と学習目標と成績評価基準

●○●学習成果と学習目標と成績評価基準●○●

本学は、学類ごとに卒業時に学生が達成すべき知識と能力を「学習成果」として明文化、公表しており、研究科においては「学位授与方針」がこれに当たる。各部局は、研究室での研究に基づく教育をはじめ、授業科目を時間軸も含め構造化し、それらの教育の総体によって「学習成果」を達成しようとしている。各学類は、複数の「学習成果」を設定しており、一つの「学習成果」をどのような授業科目群によって達成しようとするかは、学類ごとに策定しているカリキュラム・マップに示されている。このことから、各授業科目の「学習目標」は、紐付けされている「学習成果」と整合していることが求められる。また、「成績評価基準」の定義を「学生がどのようなパフォーマンスを示すことができれば成績「合」が与えられるかを明文化したもの」としており、したがって本学でいう「成績評価基準」は「学習目標」と同義となることから、昨年度からシラバスの「学習目標」の欄に、「成績評価基準」として、当該の授業科目によって、どのような知識・能力を獲得し、その獲得を達成したことを示すためにどのようなことができるかを示すことが学生に求められるかが記述されているかどうかについて、全学で部局ごとにシラバスの検証が行われている。

10月4日に開催された教育企画会議において、平成24年度の学類卒業生を対象とした学類ごとの「学習成果」の達成度自己評価アンケートの集計が終わったこと、今年度も平成26年2月~3月に同様の「学習成果」達成度自己評価アンケートが実施されること、また今年度から、共通教育科目、大学院科目を含むすべての授業科目の「学習目標」達成度自己評価アンケートが同時期に実施される予定であることが報告された。今年度からは、両アンケートがポータルを介した新規のシステムで行われることから、同一の学生が回答した「学習成果」と「学習目標」とを結びつけることができるため、両者の整合性、つまりカリキュラム・マップを検証するためのデータを提供することが予想される。(「学習目標」の記述がWEBシラバスから本システムに読みこまれる。)また、本システムでは「学習目標」達成度自己評価と当該授業科目の教員による「成績」とを結びつけることができるため、両者の相関の有無から、「学習目標」つまり「成績評価基準」を教員が検証する材料を提供することが期待される。

シラバスの「学習目標」(つまり「成績評価基準」)の欄に「・・・を理解している」とよく記載されるが、「理解している」とはどのような状態をいうのであろうか。学習により獲得することを期待されている知識・能力がどのようなもので、それらを獲得したことを示すために具体的に何が求められているのかを学生に明示し、「主体的学び」のための指針を学生に示すためには、その「学習目標」が達成された状態について具体的に記述することができ、その状態に達しているかどうかを判断するための質問や課題や試験問題を設計することができなければならない。例えば「・・・を理解している」とはどのような状態かを説明できなければならない。

 筆者は、問題発見能力、仮説形成能力、仮説検証方法の立案能力を養成するための能動的学習を促す低年次の授業の設計が重要な課題であるとの考えを持って、共通教育科目での少人数の討論型授業の設計を試行錯誤で行っている。後期に開講している共通教育科目「論理的思考と科学技術社会問題」では、シラバスに「学習目標」として、1)論証(根拠と結論)の構造を分析し、その妥当性を評価することができる。2)論証の分析に必要となる科学的事実を同定し、その事実に関する知識を自己学習によって得ることができる。3)論証を分析する過程で、疑問を持ち、新たな問題を発見することができる。4)独自の仮説を組み立てることができる、と記載している。これらの学習目標を学生が達成したかどうかをどのように評価すればよいのであろうか。

 今年度の授業では、「現代社会における生活習慣と病気」というテーマを設定し、このテーマを議論を通して掘り下げていく過程で、問題を見つけ、仮説を形成し、その仮説の妥当性を評価するための情報収集を行うこととした。授業の途中で、議論の流れを示す模式図を提案し、それに基づいてさらに議論を掘り下げるとともに、次回の授業の冒頭に前回の議論の流れをまとめた模式図を学生に示させた。毎回の授業での議論や授業時間外で集められた情報は、このように模式図として記録を残していき、何がアイデアの起点になったかなど、議論の根拠と結論がどのように発展していったかをできるだけ可視化することとした。この記録を成績評価の対象とする予定である。「現代社会における生活習慣」として、経済成長とともに、食品会社や外食産業の成長、残業時間の増加という問題が指摘され、ここから「塩分摂取」と「睡眠」が出てきた。「塩分摂取」については、マスコミでよくいわれている高血圧や心臓、脳の疾患のほかにがんとの関係があるのではないか、との「仮説」が提案された。また、外食ではラーメンで塩分が高いほうが旨いと感じること、さらに旨いラーメン屋を求めるようになることから、塩分摂取には麻薬に似た作用があるのではないかとの「仮説」が提案された。麻薬作用の発現に関わる脳の神経回路があることから、同じ神経回路が塩分や甘味などの増幅を促すことに関わっているのではないか、との次の「仮説」が提案され、まず、麻薬作用とは何か、その作用に関わる神経回路についてどの程度わかっているのか、さらに塩分の麻薬作用の有無、神経回路との関わりについての仮説を検証するために情報収集を行うこととした。この授業で意図しているのは問題発見、仮説形成、仮説検証などを行う「批判的思考力」の養成である。このような能力は研究室での研究を通した教育によって養われるものであるが、低年次の授業での「学習目標」とするための授業設計が今求められていると考えられる。「思考力」を育成あるいは促したかどうかを評価することは難しい。レポートなど成果物で評価することになると思うが、筆者は、思考過程を脳波で特徴づけることを基盤研究(C)「講義型授業における協調学習設計-論証作成CSCL開発と脳波位相同期による評価」2011~2013年度)で試みた。近い将来、学習評価に脳神経科学の知見が活用されるときが来るかもしれない。なお、批判的思考力の育成と評価については、以下の案内の通り、11月22日(金)愛知教育大学の久保田祐歌先生に講演をしていただく。是非ご参加いただきたい。  (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)

 

●○●第3回評価システム研究会開催のお知らせ●○●

日時:11月22日(金)16時30分~18時    

場所:総合教育1号館2階大会議室  

題目:クリティカルシンキングの評価と育成

講師:久保田祐歌

(愛知教育大学 教育創造開発機構 大学教育研究センター 研究員)

趣旨:大学生のクリティカルシンキングを評価するための標準テスト(主に米国で開発)を紹介する。テストで評価される「クリティカルシンキング」の内容と共に、その育成方法にも言及する。