【No.470】
中国における教育質保証について

○●○中国における教育質保証について○●○

 2013年9月16日、17日の2日間、中国上海において大学および高等教育質保証機関への訪問調査を行った。訪問先は、同済大学[1]、上海建橋学院[2]の2大学と上海教育評価院[3]の3カ所である。今回の訪問調査は、2011年に大阪大学、金沢大学の高等教育研究者を中心に立ち上げた日中韓高等教育質保証研究プロジェクトの一環である。同プロジェクトでは、2011年には中国、韓国、台湾への訪問調査を行っており、今回は、その後の新たな高等教育質保証への取り組みを確認するとともに、東アジア圏における大学質保証の共通枠組み構築の可能性について、現地の研究者との認識の共有を目指すものである。調査内容は、高等教育における「競争・評価」政策動向、質保証機関の活動、内部質保証体制、「学習成果測定・評価」などである。以下、訪問調査の概要を説明するが、中国高等教育独自用語等は用いず、日本の高等教育制度の用語での説明となる点をご了解いただきたい。

センターニュースNo.470図1.jpg先ず、同済大学であるが、1907年にドイツ人医師により設立された大学で、学生数50,000人以上、教員数4,200人以上、学士82、修士218、博士94課程を持つ総合大学であり、土木建築では中国内でもトップクラスとされ、国家重点大学としていわゆる985工程、211工程両方の指定を受けている大学である。同大学における教育質保証体制は、2003年学部対象、2007年大学院対象の質保証研究を始め、2008年に試行を行い、2009年に全学実施されている。質保証活動は、人材養成目標に基づき、質と量による基準(主要項目、一級指標、二級指標、質要求項目に分けられている)および各種活動規程を定めるところから始まり、品質管理機構[4](9名の専任職員)において委員会、データ、様式、報告書の管理を行い、学部、大学院では50人教育品質管理者(教員の兼任)、150名の教育品質専門官(教員の兼任)がそれぞれの専門分野毎の教育質保証活動に携わっている。これらの兼任教員は、年10回程度他の教員の授業を参観し報告書を提出する。ここで問題がある場合は、経験を積んだ専門の教授が分析および改善提案を行う。これらに加えて、全学としての人材養成目標達成のため、多方面、多段階、長期的調査を行っている。具体的には入学前、在学中、卒業後の学生および就職先の調査を行い、データ分析、それに基づく対策および改善を実施している。また、外部評価としては5年に一度、中国政府教育部の基準により実施されているが、985工程指定大学のため、通常の基準より高いレベルが要求されている。

センターニュースNo.470図2.jpg上海建橋学院は、2000年に上海建橋グループにより設立された私立大学であり、学生数約13,000人で7学部において学士課程および短期大学課程を有している。質保証活動としては、設立当初から、試験、課題のチェック、学生評価、教員自己評価、学生との懇談会実施などに取り組んでおり、その後、学生情報員制度、質管理制度規程整備などを経て2012年には第三者評価を受け、今年2013年には中国政府教育部の評価を受ける予定である。質管理制度においては、「目標・組織」、「教育資源」、「教育サービス」について分析・管理を行っている。具体的には教育資源、教育プロセスにおけるデータを収集し、それらを人材養成目標から導き出される質・量の目標に照らし分析している。分析の流れとしては、質保証活動担当組織整備、学部毎に質保証担当部署設置、学生情報員制度整備を行い、同済大学と同様に質と量による基準(主要項目、一級指標、二級指標、質要求項目に分けられている)に沿って現場毎に監視点を設けて、データに基づく追跡・改善活動が行われている。

上海教育評価院は、上海市教育評価院(Shanghai Education Evaluation Institute、以下SEEI)は上海市の一機関として、上海市教育委員会等と連携し、高等教育、基礎教育(幼小中高)、職業・成人教育、各種民間教育機関などの評価を担当している。また、上海教育評価フォーラムを開催するなど学術交流、研究活動も行っている。交流活動の一環として、2009年からアジア太平洋質保証ネットワーク(APQN, Asia-Pacific Quality Network)の事務局を担当している。スタッフ数は58名でその専門分野は教育学、工学、人文学等多岐にわたる。中国政府教育部が5年に一度実施する機関別評価をサポートするとともに、新設大学の内部質保証システム構築支援、中国全土で実施されている修士論文・博士論文質保証のための外部チェック、業績連動型資源配分評価なども行っている。ちなみに中国全体での機関別評価は第一サイクルでは全ての高等教育機関に同一の基準を当てはめて実施されたが、現在行われている第二サイクルで高等教育機関を3つのレベルに分け、上から、審査評価、選優評価、合格評価という名称の評価が実施されている。評価基準は、中国政府教育部が定めている。

以上、中国における教育質保証の一端を2大学、1評価機関への訪問調査の結果を基にまとめたが、今回の訪問調査では、実際の現場で上記質保証体制が本当に機能しているかまでは確認できなかった。ただ、社会・学生からの要請への対応、学内で教育資源管理、教育プロセス管理などの内部質保証体制構築、在学生・卒業生のアウトカムズ調査といった世界の高等教育質保証の流れを押さえた体制整備への共通認識があることは確認できた。金沢大学も中国の18の大学と大学間国際交流協定を結んでおり、200人以上の中国人留学生が在籍している[5]ことを考えると、協定締結大学の中国政府教育部の評価結果、内部質保証体制を確認し、それに負けないレベルでの内部質保証体制を構築することが日中両国間大学のさらなる交流の発展、金沢大学の国際展開に必要ではないだろうか。(文責 評価システム研究部門 堀井祐介)



[1]http://www.tongji.edu.cn/english/

[2]http://www.gench.edu.cn/english/

[3]http://www.seei.edu.sh.cn/

[4]http://qaoffice.tongji.edu.cn/website/page.do?id=1

[5]金沢大学概要2013