【No.469】
学習成果と教育の質保証

●○●学習成果と教育の質保証●○●

9月5、6日、平成25年度全国大学教育研究センター等協議会が本学で開催された。この大学教育研究センター等協議会には30以上の国立大学のセンターが加盟しており、各センターは、高等教育研究、教養教育あるいは全学の教育マネジメント、FD推進など特化するミッションが異なっているが、今年度のテーマは昨年度の愛媛大学での開催テーマを引き継ぎ、多くの大学教育研究センターの活動を包括するフレームワークになると考えられる「大学教育改革と質保証」とすることとした。

学位授与方針に基づいた教育プログラムの学習成果の明確化、その学習成果を達成するための戦略である教育プログラムの構造の可視化を始点として、教育プログラムを構成する授業科目の学習目標の達成の累積が学習成果の達成につながっているか、授業科目の学習目標の達成度評価の方法は妥当か、授業科目の教育内容・教育方法は学習目標および学習成果の達成に妥当なものとなっているか、学習成果は達成されたのか、これらを検証するための方法論の確立とともに、学習成果と学習目標を達成するために必要な教育プログラムおよび授業科目における教育方法の改善のために、つまり教育評価とその結果に基づいた教育改善のサイクルである教育の質保証のために大学教育研究センター等と各部局とがいかに連携すべきかついて、先進的な事例の報告(3大学)、教育の質保証に関わる研究成果の報告(3件)に基づき、議論を行った。

3大学から事例報告が行われたが、力点を置く話題は異なるものの、共通するのは、達成されるべき知識と特に能力(学習成果:Ability-based Learning Outcomes)を明確にした上で、その学習成果を達成するためのカリキュラム、授業科目、教育方法へと改善を行おうとする教育改革である。

鹿児島大学は、第2期中期目標・中期計画に「学士力を培う共通教育カリキュラム等の改革を推進する。」と定めており、この取組みについて鹿児島大学副学長・教育センター長の飯干明先生から紹介していただいた。大学憲章に基づき、共通教育によって養成されるべき能力として「人間力」と「専門基礎力」を導き、さらに「人間力」の要素として「実践・判断・精神力」「知力(人文・社会科学)」「知力(自然科学)」「身体力」「コミュニケーション力」を導いている。共通教育は、「人間力養成プログラム」と理系基礎科目群「専門基礎力養成プログラム」とからなり、それぞれ「人間力」と「専門基礎力」とを養成するための授業内容を持つ授業科目から構成される。特に「人間力養成プログラム」を構成するにあたり、「人間力」養成のための教育方法として「アクティブ・ラーニング」を導入することを指針としている。

山口大学は、第1期中期目標・中期計画に基づいてディプロマポリシーの策定に着手し、その後、共通教育の学習成果の明確化を行い、共通教育科目と専門教育科目とからなるカリキュラムマップを策定している(詳細については、センターニュース380号を参照ください。センターHPに掲載中)。協議会では、山口大学大学教育センター副センター長の小川勤先生から、共通教育科目の学習成果の明確化に伴う共通教育の必須化と共通教育科目の削減について紹介していただいた。山口大学の共通教育改革のポイントは、全学生が共通教育の学習成果(名称は「学習の目的」)を30単位の必須科目で達成することとしたことである。例えば、「哲学(1単位)」はクラスが異なっても「哲学(1単位)」に設定された「学習の目標」(「哲学」の「学習の目標」は、「哲学・思想・宗教・芸術について基礎的知識を身につけ、諸課題を発見・分析・考察する力を養う。」)を各クラスの担当教員全員が共有することになる。30単位の必須科目の開設は、結果として全共通教育科目数の削減につながった。必須科目「哲学」の開講部局は「人文学部」というように、選択制に伴う「全教員出動体制」は必須化とともに「全部局出動体制」に改められた。

センターニュース400号でも触れたが、三重大学は、アクティブ・ラーニングの代表的な授業形態であるPBL(Problem Based Learning)を初年次教育も含め全学で展開していることで知られている。第1期中期目標・中期計画で、全学で共有する教育目標(学習成果)である「感じる力」「考える力」「コミュニケーション力」とそれらを総合した「生きる力」をPBL教育により育成するとした。協議会では、三重大学高等教育創造開発センターの中島誠先生から、センターが開発したPBL教育の基盤となる初年次教育科目の内容、PBL授業の評価、さらにセンターが行う4つの力の達成度調査等について紹介いただいた。学習成果の設定、その達成のためのPBLとその評価方法の開発、全学的な学習成果達成度調査、それらのデータに基づいた教育改善という教育の質保証の取組としてはおそらく我が国で最も進んだ事例の一つである。

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本学の状況については、協議会の冒頭で上図を用いて、昨年度初めて学類ごとの学習成果の達成度自己評価調査が行われたことを紹介した。今回の協議会で報告いただいた3大学の事例は、本学にとっても大変参考になると考えられる。                                            (文責 大学教育研究開発部門 西山宣昭)