【No.467】
コミュニケーションを基盤とした障害学生支援 ~日本学生支援機構「障害学生支援研修会」に参加して~

○●○コミュニケーションを基盤とした障害学生支援

日本学生支援機構「障害学生支援研修会」に参加して~○●○

 8月21日、22日、独立行政法人日本学生支援機構主催の「平成25年度障害学生支援研修会[理解・実践プログラム]」が大阪で開催された。研修会の目的は、①障害学生のニーズに応じた円滑かつ効果的な支援を実施することのできる教職員を養成すること、②自校の障害学生支援体制の課題を明確化し、整備・改善に貢献できる能力の向上を図ることである。今回の[理解・実践プログラム]では、基本的な理解を深め、関係者と連携・協力関係を築くなどのコーディネート力を高めることが期待されている。(11月に開催される[応用プログラム]は、今回習得したことを踏まえ、より具体的に支援のマネジメント能力を磨くための内容とのことである。)この研修会に参加する機会を得たので、以下にその概要を報告する。

 1日目は、広島大学アクセシビリティセンター長の佐野眞理子教授、大阪大学キャンパスライフ支援センターの松原崇助教、そして支援を受けた経験のある学生による講演だった。

佐野先生からは、各大学等における障害学生の在籍率が年々高まっている現状が報告された。支援については次のような内容であった。「授業の情報保障」や「研修・啓発活動」は年々活発になってきている。しかし、支援担当者については、専任はほとんどおらず、兼任の担当者を増やして対応している現状がある。また、「規定の整備」、「部署・機関の設置」、「専門委員会の設置」にも大きな変化は見られない。これでは、組織的な支援体制が十分整えられているとは言えず、一部の関係者が対象学生の在籍する期間のみ支援を行うに止まっている恐れがある。障害学生支援に全学的に取り組むことは、他の学生にとっても支えとなり得る。例えば授業において、障害学生に対して個別の支援者を配置するのみの「閉じられた支援」よりも、障害学生の困難を想定し、板書や話し方を工夫する「開かれた支援」は、結局のところ、全ての受講生にとって分かりやすい授業となる。「閉じられた支援」は、個人の障害に着目するのみで、障害学生の心理的な孤立化も懸念される。一方で、授業全体のアクセシビリティに着目している「開かれた支援」は、誰もが学びやすく、高等教育のユニバーサルデザイン化を目指しているといえる。

 松原先生からは、障害の種別によるニーズの違いと支援方法について具体的な解説があった。例えば発達障害傾向のある学生の「履修計画が立てられない」「対人関係でトラブルが生じる」「集団での討議や作業になじめない」といった困難例に対しては、「定期的な状況の確認と助言」「履修に関する相談・助言」「社会的スキルの指導」「居場所の提供」などの対応が考えられる。具体的な支援方法は、日本学生支援機構「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成23年度改訂版)」(http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/guide/top.html)をご覧いただきたいとのことである。

 1日目最後の、支援を受けた経験のある学生(匿名・障害種の異なる2名)の講演では、忌憚のない意見を聴くことができた。高校卒業したての入学生には、高校と大学の違いをイメージすることが難しく、学生生活を始めるにあたり、どのような支援が必要なのか、本人も分からないことがある。学生生活を送りながら、困難に遭遇した際に、その都度相談できる環境が必要である。また、学生によって、障害の程度や利用しやすい支援も異なるため、障害名は同じでも、支援の仕方が同じであるとは限らない。このように障害学生支援は、本人とのコミュニケーションを継続的にとりながら、より本人に合った支援を見つける過程を共に歩むことが重要となる。講演者からは、個々のパーソナリティやニーズ、能力に応じた柔軟な支援提供が必要であり、「目指すは高い質の支援より、つながりを大切にした支援である」という意見が述べられた。また、支援者、当事者、保護者、同級生を含めた全員の「理解と受容」、お互いの「歩み寄り」が支援の持続に必要であり、粘り強く、根気強い支援をしてほしいという要望も語られた。

 2日目は、山口大学大学教育センター副センター長の小川勤教授、広島大学アクセシビリティセンターの岡田菜穂子特任助教による講演と、参加者によるグループ討議が行われた。

 小川先生からは、支援の流れや教職員の役割、相談体制について、取り組みの紹介も交えて示唆をいただいた。山口大学では、障害学生本人にも、支援内容の協議への参加を求めている。このことは、障害学生本人が自身の障害特性やニーズへの理解を深め、支援方法、支援の求め方、支援者との付き合い方を学ぶ機会となり得る。支援方法の決定においては、初回相談から、支援内容の協議と承認、支援の実施、実施後の評価、修正という流れが繰り返される。支援担当者は、授業担当教員への配慮事項の周知に関して、本人・保護者と授業担当教員との間に立ち、双方との話し合いを重ね、大学が支援する範囲と、学生や保護者が自助努力する範囲を確認している。

 岡田先生からは、広島大学で実際に行われている支援者の育成についての紹介があった。広島大学では、支援者を育成する「アクセシビリティリーダー育成プログラム(ALP)」を実施している。このプログラムには、支援者育成のための講義も含まれる。講義は、障害についての理解、点訳、ノートテイク、ガイドヘルプなどの支援技術の習得、実際の支援活動、などを含む数科目が設定され、支援の単位化を行っている。講義を受け、アクセシビリティリーダー認定試験に高い成績で合格すると、学外研修や学内・地域・企業でのインターンシップに参加することもできる。また、行った支援活動に関する証明書が発行され、就職活動に活かすことも可能である。このような取り組みは、障害学生と支援学生とのつながりの中で、支援学生の成長をも期待できるものである。ただし、こうした活動には、大学の理解、指導者の確保、財源の確保、といった課題も指摘されている。

 最後の参加者によるグループ討議では、障害学生支援にあたり、支援者としての課題について話し合われた。グループ討議、全体でのシェアリングを通して、各大学等における組織作りが急務となっている現状が確認できた。障害学生支援に関しては、研修を行っても参加者自体が固定されており、啓発が進まないといった実情もある。一方で、ニーズの把握と支援の実施には、各部署、教職員からの情報と協力が不可欠である。障害学生の受け入れにあたっては、全学的なチームによる支援が求められることを強調しておきたい。

障害学生支援研修会参加により、このように、支援は学生と教職員、学生と学生、教職員と教職員といった全学的なコミュニケーションの上に成り立つことが実感できた。障害学生の入学が決定した後で、慌てるのではなく、日頃から受け入れ準備を進めておき、入学後も本人および関係者の継続したコミュニケーションを重ねつつ、安定した支援を行っていくことが、真に障害学生にとって開かれた大学となるのではないだろうか。金沢大学では、学生支援に関して横のつながりを作るべく、9月18日(水)にe教育サロン(角間キャンパス 先端科学・イノベーション推進機構3階)にて「気になる学生をあらためて見つめてみる」というテーマで勉強会を開催する。詳しくは「e教育サロン」(https://www.facebook.com/edusalon?ref=stream)をご覧いただきたい。

なお、学生数が多く、支援を必要とする学生と、支援を行う学生が継続的に在籍すると見込まれる大学では、単独で体制を整えることが可能だが、石川県のように、各大学等で継続的な障害学生の入学が見込まれなかったり、単独で支援学生を安定的に確保できるかどうか危惧されるような地域においては、大学間のコミュニケーションも重ね、連携して支援体制を整えていく必要があることも忘れてはならない。(文責 大学間連携共同教育推進事業障がい学生等支援担当 濱田里羽)