【No.463】
アクティブ・ラーニングの導入とその問題

●○●アクティブ・ラーニングの導入とその問題●○●

7月27日、文部科学省「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」に選定されている「中部圏の地域・産業界との連携を通した教育力の強化」事業(産業界GP)の一環として、富山県立大学の企画による第2回北陸地区・短大「連携FD」研修会が開催され、事業参加大学である金城大学短期大学部、金沢大学、金沢工業大学、福井大学、富山国際大学、富山県立大学からの参加者のもと、「アクティブ・ラーニングの導入とその問題」をテーマとした講演、パネル・ディスカッションが行われた。

九州国際大学法学部教授の山本啓一氏による講演「大学生のリテラシー育成とアクティブ・ラーニング」では、アクティブ・ラーニングの現状、課題を整理した上で、九州国際大学法学部で行われているアクティブ・ラーニングのカリキュラムへの組み込み、授業の設計と方法について紹介された。初年次の入門演習、文章表現科目、2年次から4年次までのゼミ科目、課外のサービス・ラーニング(防犯ボランティア活動)、他大学と連携したオフ・キャンパス研修プログラムを配置し、アクティブ・ラーニングの学習成果としての情報収集力→情報分析力→課題発見力→構想力→表現力→実行力を段階的に習得させる取組について、具体的な授業設計・方法が紹介された。また、九州・沖縄地区の産業界GPの取組としてアクティブ・ラーニングの授業設計・方法についての研修、プレゼンテーションやレポートを始めとする学生のパフォーマンスに基づいて学習成果を評価するための成績評価基準(ルーブリック)の開発が行われていることが紹介された。

パネル・ディスカッションでは、金沢工業大学基礎教育部講師の石川倫子氏、富山国際大学現代社会学部教授の大谷孝行氏、筆者がそれぞれの大学での状況、授業の紹介を行った。

石川氏からは、金沢工業大学の必須の導入科目である修学基礎Aでの事例が報告された。学生相互の連携とグループ活動体験を目的とした与えられたテーマについてのグループ討論と文章力向上を目的としたレポート作成の演習から構成されており、前者では、容疑者誤認が発端となって事件とは無関係な人の個人情報がネット上で拡散した事件を題在として個人情報漏えいの原因と防止策についてグループ討論を行い、後者では、卒業後の人生設計を題在として、自己分析と社会から求められる知識と能力、文章・レポート作成についての講義を経て、受講生間で意見交換を行いながらキャリアデザインレポートの作成を行う授業内容・方法について紹介された。

大谷氏からは、現代社会学部としてアクティブ・ラーニングの導入が組織的に進められており、今年度前期の授業アンケートでアクティブ・ラーニングに関する項目が追加されるなど、状況が報告された。また、各学生が特定の企業を取り上げ、その企業の業績の分析を市場の状況とともに事前に調査させ、授業での議論を通して、取り上げた企業の業績を予測させるとともに、アナリストレポートとしてまとめさせる授業が紹介された。現象への興味や自主的な調査の面白さへの気づき、学生の協働の学習効果が得られる一方、学生の能力差、議論の前提としての知識の獲得、議論の御膳立てなどの課題が示された。

筆者は、批判的思考プロセスを【他者の論証の評価→課題発見・課題設定→論証(仮説)形成→論証(仮説)の評価→次の課題発見・課題解決】とした上で、アクティブ・ラーニングを【学習成果としての批判的思考力を養成する教育】と定義することを提案した。レポート作成、口頭発表、討論は批判的思考を促すこと、批判的思考プロセスは研究そのものであり、卒業研究や研究室でのゼミが批判的思考の養成の主な場となっているが、それらにつながる低年次のアクティブ・ラーニングの授業の設計が課題であると述べた。本学では、学域・学類制への改組に伴い学類ごとのカリキュラム改革が行われ、学類ごとに明文化された学習成果および第2期中期計画【授業の多様化】に沿った授業方法の改善について検討が行われていること、昨年度から教育実践報告会「能動的学習と学習成果」において全学的な情報共有を行っていること、具体的には大人数でのPBL(Problem Based Learning)、課題発見型の学生実験やインターンシップ、PBLチュートリアル教育が行われているなど概要を紹介した。また、筆者が授業担当している後期の共通教育科目「健康問題を化学、生物学で検証する」で、事前の情報収集と授業での議論により「麻薬中毒と甘いものがやめられないのは同じ機構が働いているのではないか」という仮説形成を行い、またその検証のための情報収集と資料輪読を行った24年度の授業の概要を紹介した(センターニュース第439号)。

パネル・ディスカッションでは3大学の報告に対して山本氏とフロアから質問があり、アクティブ・ラーニングの授業方法や組織的に取り組む上での課題などについて意見交換を行った。

前提となる知識がなければ、アイデアを出させたり議論を展開させることは難しい、グループであれこれやっても大した成果は出ないなど、山本氏がアクティブ・ラーニングに関わる教員の疑問を整理しておられた。確かに知識が乏しい低年次の学生にとって仮説形成、仮説検証は難しいが、根拠を明確にさせること、そして疑問を持ち課題を見出すことが特に重要であることに気付かせることは可能と思われる。前期に開講している共通教育科目「環境の現場に学ぶ」では、食やエネルギーの確保の持続可能性について検討するために、北陸農政局や北陸電力の担当者に現場の現状について紹介していただいているが、事前にいただいた資料に基づき授業でグループ討論を行った上で担当者との討論に臨む。今年度は、農業への企業参入や代替エネルギーの参入の障害がどこにあるのかなどの疑問を事前に整理し、例えば、電力供給に代替発電から得られる電力を加える場合に、供給源の異なる電力を同時に活用するための配電の切り替えの自動化ができるのではないかなど、具体的な提案(仮説)が出された。

上記の批判的思考プロセスを研究室での教育の前にできるだけ早期に繰り返し体験させることが重要と思われる。 (大学教育研究開発部門 西山宣昭)

 

●○●第16回カリキュラム研究会開催のお知らせ●○●

日時:2013年8月27日(火)8時30分~10時    場所:総合教育1号館2階大会議室  

題目:改めて考える高大連携 

講師:坂詰貴司(芝中学高等学校教諭、大学教育開発・支援センター客員研究員)

趣旨:中教審の答申により高大連携が注目されてから月日が経ちました。その間、様々な議論や提言がされ、実現したこともいくつかあります。また、昨年からの動きで「秋入学」「4学期制」「センター試験の検討」など新しい要素が加わってきました。本発表では、これらのことを踏まえて、今までの検証をしたいと思います。そして原点に立ち戻り、様々な視点での提言を、参加者とともに考えていきたいと思います。なおオーストラリア・ビクトリア州の事例を参考にする予定です。