バックアップ・ポリシー(学生支援・学習支援の方針)を成す要素

センターニュース

【No.488】
バックアップ・ポリシー(学生支援・学習支援の方針)を成す要素

○●○ バックアップ・ポリシー(学生支援・学習支援の方針)を成す要素 ○●○

大学教育は、学生にどのような学習成果[1]を持たせうるのか、そして学生自身の生涯にわたる自律的な学習の契機としての主体性を涵養できるのか。学生一人ひとりの学習経験に寄り添う視点と、ディプロマ・ポリシーの達成を目指すカリキュラムの構造からの視点が、教育と学習とが立ち上がる講義・演習と自学自習の場で、幸せな出会いを果たさねばならない。学生の学びについての自己認識・気づきを語ることが、教育機関の提供する種々のプログラム[2]上での定量化と一致すること、あるいは近づこうとする努力の積み重ねが、学生自身の確かな成長と裏付ける学位・修得単位の質保証を結ぶのではないだろうか。

本稿までに、大学の入り口から出口までを結ぶポリシーの諸要素[3]、ルーブリック(学習成果の要素を分解し観点(学修規準)×尺度(基準)のマトリクスとして学習到達の深さを示す学習進捗度評価表)[4]や教育学習方法の革新による教育接続の課題の解決[5]を考えてきた。ふたたび、学生の成長を支援するための教師のまなざしと教育哲学・理念に立ちもどって、バックアップ・ポリシー学生支援・学習支援の方針)を構成する諸要素について議論したい。3つのポリシー(入学者受け入れ、教育課程編成、学位授与)、建学の精神との関連する形で、おおよそ次のような構成要素を考える。

・  学生支援ポリシー:自学を保障する学習環境、リメディアル・初年次教育等の学習支援

・  経済支援ポリシー:経済的援助、学内ワークの活用

・  障害学生支援ポリシー:合理的配慮、障害への理解と援助

・  就職支援ポリシー:キャリア教育と就業支援

・  留学生・留学者支援ポリシー:留学生の受け入れと、留学への支援方針

・  卒業生支援ポリシー:卒後教育、生涯にわたる大学資源の活用

ここで、「支援」という用語の使用と考えも一段広げるべきであろう。障害学生支援も内包する(むしろヒントを得ることができるが)概念として、他者が被支援者を援助するために教育方法と学習環境に合理的配慮を前提としながらも、学習者の自律的成長を支えるエンパワーメントに拡張される。また、リメディアル教育、初年次教育、学習支援は、高大間の円滑な教育接続の目的があるが、目指す所は大学後年次へ向かっての深い学びへの接続にあり、生涯学習につながる市民性と主体性の涵養である。ならば、学習観の転換:インプットからアウトプットへ、知識・理解から評価・創造へ、個人からコミュニティへの貢献へ、といった様々な扉を開くこともバックアップ・ポリシーに含まれるようになる。講義と授業外学習の入れ替えによる「反転授業(flipped classroom)」、課題発見・解決型学習(PBL)などの種々の能動的学習が方法論として注目されているが、目指すべき反転と転換は、教育者と学習者の学習への意識の転換にある。

D.A.ブライは、「大学の講義法」(1971、玉川大学出版部、1985邦訳)で、学習者の態度と行動の変容に対して一方通行の「講義」が他の学習方法に比べて効果が変わらないことを示している。また、教育工学者の沼野一男は「情報化社会と教師の仕事」(国土社、1986)で、教えない教育が学生の問う力を伸張することを示唆している。私は、教師と講義の力も信じている。そして、我々の熱意と期待が伝播するための、効果的に伝える方法がある。学生自身の力を伸ばす方法も、学習科学の進展、協調学習として開花しつつある。ポリシー・メイキングを通した大学と教師の教育哲学の深化と、学習への注目による教師の脱中心化、教育と学習の過程の可視化の相乗によって、アクティブ・エデュケーションの実践が進むと考える。沼野一男の前掲書から、学校や教師の役割に関する箇所を引用する。

 子どもたちのために学校や教師は何をしなければならないのか。この問いは、一人ひとりの教師がその教育観あるいは人間観に基づいて答えるべき問いである。しかし、その答は単なる理想や新年の表明であってはならない。少なくとも子どもたちの学習指導に意欲を持ち、そのための努力を惜しまない多くの教師に、現実に期待できるものでなければならないだろう。

(文責 教育支援システム研究部門 杉森公一)

 

●○● 教育企画会議教育改革部会主催教育実践報告会のお知らせ ●○●

平成25年度教育実践報告会・第11回大学教育セミナー共同開催

テーマ:「能動的学習と学習成果」

主催:教育企画会議教育改革部会、共催:教育企画会議FD委員会、大学教育開発・支援センター

日時:3月18日(火)13時30分~17時

会場:金沢大学角間キャンパス自然科学図書館棟大会議室

趣旨:金沢大学における「各学域・学類及び共通教育機構における能動的学習を促す実践事例を全学で共有し、各部局における授業形態に応じた能動的学習を推進する」取組の一環として,能動的学習に基づく課題探究・課題解決力等を養う学類の優れた取組みについて全学で共有するとともに、他大学の事例も参考としながら、学内外の参加者とともに「能動的学習」の設計とその学習成果について議論する。

プログラム

【講演】「PBLと学習支援-同志社大学プロジェクト科目におけるTA・SA協議会の試み」

山田和人 同志社大学PBL推進支援センター長 

【学内事例報告】

     村井淳志 学校教育学類教授

「教育現場で即戦力となれる社会科教師を養成するための初等社会科教育法の実践

-100名受講の大講義-」

    佐藤秀樹 経済学類准教授「経済学類の初学者ゼミ―具体的事例の紹介―」

    米山 猛 機械工学類教授「創造デザイン実習による課題解決能力育成」

 【全体討論】



[1]学習を生涯にわたるものと考えるならば、大学教育段階では、学士課程の教育プログラムを終えるまでの中間的なラーニングアウトカムズとして捉える必要がある。

[2]教育プログラムには正課のカリキュラムだけでなく、準正課カリキュラム(Co-curriculum)が含まれ、さらに学生コミュニティでの自発的な学習(インフォーマルな学習)、大学が立地する地域・企業・自治体での学校外経験(ノンフォーマルな学習)との相互作用も意識したい。

[3]センターニュースNo.456 参照。

[4]センターニュースNo.451 / 461 / 477 参照。

[5]センターニュースNo.466 / 482 参照。